米IBMは5月15日(現地時間)、世界的に採用されている量子ソフトウェアであるQiskitの進化と拡張について発表した。2017年にSDK(ソフトウェア開発キット)として提供開始されたQiskitは、同社の量子ハードウェアシステム上で量子回路を構築・実行できるようにするオープンソース・ツールで、これまでに60万人以上のユーザーが3兆個以上の量子回路を実行しているという。
Qiskitは、量子コンピューティング実験の探求と実行に使用される一般的な量子ソフトウェア開発キットとしてスタート。100量子ビット超のプロセッサ上の複雑な量子回路から可能な限りの性能を引き出せるように構築されている。
最新版では、さらなる性能を提供するための包括的なソフトウェアスタックに拡張。これにより、各領域で次世代の量子アルゴリズムを発見するために必要なQiskitの機能が利用可能になる。
量子優位性に到達するためには、高度な古典計算と量子計算の両方を活用する方法でそれぞれの問題をマッピングし、量子で効率的に実行できるように問題を最適化して実際の量子ハードウェア上で、量子回路を効率的に実行できるツールセットが必要となっている。
最新バージョンの概要
最新バージョンは、量子回路の構築、最適化、可視化のための「Qiskit SDK 1.x」の安定リリース、「Qiskit Transpiler Service」に組み込まれた、AI活用の量子ハードウェア用量子回路の最適化、量子ハードウェア上での量子回路の高性能な実行のために調整可能な「Qiskit Runtime Service」の簡便実行モード、量子コード開発を自動化する「IBM watsonx」ベースの生成AIモデルを搭載した「Qiskit Code Assistant」、量子ハードウェアと古典的なクラスター間で量子を中心としたスーパーコンピューティングワークロードを実行するためのオープンソースツールである「Qiskit Serverless」などが含まれる。
新機能の導入およびQiskit SDK内の機能向上により、ユーザーは量子ハードウェア向け回路の最適化を、Qiskit 0.33と比較して39倍高速に行うことができるほか、Qiskit 0.43と比較してメモリ使用量を平均3倍削減できることを実証しているという。さらに、最新バージョンでは、Qiskit 0.43と比較してオーバーヘッドを削減し、回路のフットプリントを縮小することができるように設計されている。
新しい実行モードでは、バッチモードを使用した場合、ユーティリティスケールのワークロードが使用しない場合と比較して最大5倍高速になることに加え、設計通りにQiskit Transpiler Serviceを使用すると、AIとヒューリスティックパスを組み合わせることで、AI機能を使用しないトランスパイラーを使用した場合と比較して、回路の深さを約40%削減できるという。