産業技術総合研究所(産総研) 太陽光発電工学研究センター実用化加速チーム 高遠秀尚 主任研究員、坂田功 研究チーム長は、ノリタケカンパニーリミテド、不二製作所、和光純薬工業と共同で、固定砥粒方式でスライスした多結晶シリコン(poly-Si)基板の表面テクスチャを形成する技術を開発したことを発表した。

同技術は固定砥粒方式でスライスしたpoly-Si基板に、産総研がノリタケと開発してきた定砥粒方式による結晶シリコン基板のスライスに関連した技術、および和光純薬ならびにノリタケと開発してきたpoly-Si基板の表面テクスチャ形成用酸エッチング液、そして不二製作所と開発してきた結晶シリコン基板へのサンドブラスト処理技術を組み合わせることで、真空装置を用いずに表面テクスチャ構造を形成して表面反射率を低減するもので、スライス後にサンドブラスト工程を導入することで、遊離砥粒方式に比べ低価格で表面テクスチャ構造を持つ基板を作製できる量産向け技術であるという。

今回産総研などが開発したpoly-Si基板の表面テクスチャ形成技術

同手法は、まず、固定砥粒方式でスライスしたpoly-Si基板にサンドブラスト処理を行い、表面に一様な凹凸を形成した後、同基板を新たに開発した酸エッチング液に浸漬して、サンドブラスト処理で生じたダメージ層の除去と基板の表面テクスチャ形成とを同時に行う。

スライスしただけの状態のpoly-Si基板の表面写真。左が遊離砥粒方式、右が固定砥粒方式

これにより、基板の表面はほぼ均一なテクスチャ構造が形成され、従来の方法だけでは得ることが困難であった均質なテクスチャ構造の形成が可能となった。また、固定砥粒方式でスライスしたpoly-Si基板の表面形状はスライス条件によって変わるが、今回開発した方法では基板表面に残留するダメージ層の深さや凹凸の形状をサンドブラストの条件を変えて制御できるため、個々のスライス条件にあわせてサンドブラストの条件を変えることで、スライス条件が変わっても常に最適な表面テクスチャ構造を形成することができるという。

サンドブラスト処理後の表面

今回の技術で作製したテクスチャ

さらに、サンドブラスト処理の有無によるエッチング処理後の表面反射率の違いを調べたところ、サンドブラスト処理をした基板の表面反射率のほうが低く、太陽電池作製により適していることが判明したという。

産総研では、今回の技術で作製した基板を用いて通常の太陽電池作製プロセスを用いてpoly-Si太陽電池を試作。代表的なセル特性として、セル効率16.9%、短絡電流34.9mA/cm2、開放電圧620mV、FF0.780(面積は4cm2(20mm×20mm))の結果が得られ、サンドブラスト処理による基板への欠陥が残留することによる接合リークの問題はなく、良好なセル特性を示しているとしている。

酸エッチング処理後の基板の反射率

試作した太陽電池の電流-電圧特性

なお、今後は固定砥粒方式によりスライスしたpoly-Si基板の作製方法、サンドブラスト処理技術、酸エッチング技術の改善を進め、量産プロセスとしての検証を行うとともに、太陽電池の構造を工夫することで、より高効率なpoly-Si太陽電池の作製を目指すという。