EMCジャパン マーケティング本部 プログラム推進部 マーケティングプログラム・マネージャ 若松信康氏

EMCジャパンは14日、「20年間の災害対策実績から見た3.11以降のIT-BCPのあり方」と題し、企業が取り組むべきIT-BCP(事業継続計画)についての記者説明会を開催した。

EMCジャパン マーケティング本部 プログラム推進部 マーケティングプログラム・マネージャ 若松信康氏は、東日本大震災で企業が直面した想定外として事象として、電力問題、自家発電燃料の不足、人・モノの移動が長期間にわたって困難という、地震直後に起こった二次災害3点を挙げた。

東日本大震災で企業が直面した想定外

そのため、企業ではITの被害状況の把握に予想以上に時間がかかり、経営層の意思決定が遅れたほか、業務復旧がなかなかできない状況になったという。

東日本大震災でのIT-BCPへの影響

これに対し企業では、拠点の移動、シナリオの追加や復旧プロセスの見直し、在宅勤務などの体制の整備、テスト環境の整備などの対策を立てているが、若松氏は、IT-BCPでは、負担が小さく持続性のある対策が必要だと訴えた。

同氏は、震災後も震災前のサービスレベルを維持しようとすれば、コスト増大につながり、結局企業は、コストか、サービスレベルのいずれを犠牲するかという二者択一を迫られると指摘。そして、同氏がBCP対策として重要だと指摘したのが「統合」、「可視化」、「整合性」の3点だ。

企業はサービスレベルの維持とコストのバランスで悩むことになる

統合では、システムを統合してスリム化する必要があると説明。異機種乱立では、サーバ等の調達コストが割高になるほか、アーキテクチャが乱立すると運用コストも割高になり、資源の共有率も下がると説明した。若松氏は、「本番サイトがメタボだと、DRサイトもメタボというダブルメタボになる」語った。

本番サイトがメタボだと、DRサイトもメタボというダブルメタボになる

ただ同氏は、アプリケーションはシステムに依存する部分が多く、すぐに統合するのは困難なので、比較的統合しやすい、バックアップやレプリケーションの部分の統合から始めるのが良いとアドバイスした。そして、統合化・スリム化のキーテクノロジーになるのが、仮想化と自動化だとした。

「可視化」では、そのシステムが停止することによるビジネスへの影響度や、影響を受けるサービス、考えられる原因、アプリやシステムの依存関係などを「可視化」する必要があるとし、「整合性」では、DBにはデータがあるがトランザクションにはデータが存在しないなど、システム上不整合のまま停止する可能性があるので、復旧する場合も、災害が発生した時点の静止ポイントに基づいて、アプリごとの整合性を保ったまま復旧することが必要だとした。

その後、「可視化」で得られた情報をもとに、数分前に戻す必要があるもの、数時間前に戻す必要があるもの、1日前の戻す必要があるものなど、システム重要度によってクラス分けし、クラスに応じてリスタートやリストアなどの復旧手段を選択するのが良いとした。

機能性、経済性の高い災害対策に向けた取り組み

そして、これらを手助けするソリューションとして、同社が6月より提供を開始するのが「IT-BCPアセスメントサービス」だ。このサービスは、大企業というよりも、その下の層で、BCPのシステムはできているが、最適化されていない企業を主な対象としており、依存度や影響度を可視化した上で、クラス分けし、クラス別の最適なBCP対策を提案する。

若松氏はこのサービスの特徴として、3カ月という短期間で結果を出すことと、低コストの2点を挙げ、通常、BCPは通常の運用コストにプラスアルファされるものだが、このサービスでは、システムを最適化してこれまでの運用コストの範囲内でBCP対策も行えるような提案を行うと説明した。

「IT-BCPアセスメントサービス」