MEMS技術とナノ・バイオ技術を融合させるBEANS

BEANS研究所/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースでは、BEANS(Bio Electoro-mechanical Autonomous Nano Systems)と呼ばれるMEMS技術とナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどの異分野技術を融合させ、革新的次世代デバイスを開発するためのプラットフォーム作りのための技術紹介などが行われている。

BEANSプロジェクトは経済産業省とNEDOの委託プロジェクトとして2008年より5年間の期間限定プロジェクトとしてスタートしたもので、今回の展示では、例えば「ペプチドによる3次元構造体への機能性ナノ粒子の選択的修飾」といった、名称だけ聞くとなにがなにやら訳が分からないものや、「宇宙適用3次元ナノ構造」といった宇宙での活用を目指した技術などが紹介されている。

ペプチドを活用した選択的修飾としては、ファージディスプレイ法を活用してZnO表面認識ペプチドを選択的に取得、量子ドット(QD)をZnOパターニングしたSi基板への選択的/可逆的な配列を行い、3次元加工した構造体尖端へナノスケールでの選択的修飾を行ったというデモを披露していた。具体的なデモの内容としては、QDを含むZnOにペプチド分子を修飾した基板を作成、紫外線を当てると、QDが発光するというもの。525nm(緑)、605nm(橙)、655nm(赤)と複数の紫外線波長に反応し、それぞれの色を発光している様子が見れた。

動画
QDが紫外線に反応してそれぞれ赤、橙、緑に発光している様子が分かる。何も光っていないものはペプチドがないもの(wmv形式 4.6MB 35秒)

問題は、これが何を意味するのか、というところだが、例えば生体分子であるペプチドをある種の接着剤として活用することなどが考えられる。接合された後に、ペプチドを焼成すればペプチドは残らず、接合したもの同士のみ残すことなどが可能となる。また、有機素材であるため、拒否反応を起こさずに動物や人間へ各種デバイスを埋め込むことができるようになる可能性があるという。

一方の宇宙適用3次元ナノ構造も、名称だけでは何のことだか意味が分かりづらいが、作ろうとしているのは赤外線の3~5μmおよび8~10μmの波長帯域の選択的透過特性を有する光学フィルタの単一膜を形成しようというもの。5~8μm帯は大気吸収帯であり、宇宙空間で確認するとノイズにしかならない。そのため、3~10μm帯の間の5~8μm帯のみ排除できれば、観測感度が向上できるようになるという。

では、従来の宇宙で活用されている赤外線センサと何が異なるのか、というと、"単一膜"であるということだという。一般的な宇宙用赤外線センサは複数膜を成膜してフィルタとして活用しているが、これだと苛酷な環境下において膜はがれなどで破損する可能性が高かったという。これを単一膜にすることで膜はがれなどが起きなくなり、より過酷な環境下でも稼動可能な強固なデバイスを実現することができるようになるという。

また、特定波長のみを選択的して受けることができるという技術は、赤外線のみならず、それぞれの用途に応じた波長だけを得ることが可能な成膜技術への応用展開が可能となり、それにより、例えば地上が今、どういった状況(例えば山火事など)になっているのかを知ることが可能となる。

今回の研究成果であるフィルタを付着させた640×480画素の赤外線センサ。なおセンサ部分は三菱電機が製造したものを使用しているとのことだが、他社のものでも使用は可能とのこと

植物工場に必須のセンサ技術

マイクロマシンセンター/Gデバイス/MemsONEのブースでは、「グリーンイノベーションを牽引するGデバイス」と銘打たれた各種技術の紹介が行われている。中でも"センサネットを活用した植物工場"は実物が展示されており、来場者の注目を集めていた。

ここ最近で盛り上がりを見せている植物工場に対する取り組みであるが、植物工場は大きく分けて「太陽光利用型」と「完全人工光型」の2種類に分けることができる。前者はビニールハウスを想像してもらうと分かりやすいが、太陽光を直接植物に浴びせ栽培を行うもの。後者はクリーンルームなどの室内で、LEDなどを用いて栽培を行うもので、いずれも無線センサを用いて細かなセンシングを行うことで、より生育度合いや味の改良などを実現しようという取り組みが行われている。センサ自体はZigBeeやxBee、Wi-Fi、Bluetoothなど要件に応じて選択可能だが、その先のネットワークへの接続に関しては以前は携帯電話などのネットワークも検討されていたが、リーマンショック以降、そうしたネットワーク費用の削減も求められるようになったこともあり、社内LANへの接続なども検討されるようになってきたという。

植物工場に求められるセンサのメッシュ度合いはそれほど高くなく、また得る情報も気温や湿度などの環境情報や水温や水質などの栽培情報、エネルギーなどで、それを元に各種施設の調整を行うこととなる。そのため、太陽光利用型の方がセンサを活用しそうに思えるのだが、実際はそういった情報は細かく分割した地点で取る必要がないため、センサの活用方法としては大差がないとのこと。

ブースに置かれた植物工場。2段式の「完全人工光型」モデル。植わっている植物は本物だった

その逆に、植物に近い、例えばどのくらいの高さで花が咲いたか、実がついたのか、どういう条件でどういった味になるのか、という研究を行っている研究者もいるとのことで、それにより、例えばAという条件ではそれほど甘くなかった果物が、Bという条件では甘くなったので、その条件をその果物に当てはめれば、すべてが甘くなる可能性もある、といった研究に活用されているという。今後、こうした研究が進み、植物工場の活用が一般的になれば、(政治の問題もあるだろうし、賛否両論もあると思われるが)、日本の農業が土を使わない農業というものへと根本的に変わる可能性も否めないという感じを受けた。