東芝の動きが再編第2幕の鍵

NECエレクトロニクス-ルネサス テクノロジの新会社では、「2社の統合を全力ですすめるため、当面、(新会社に)他企業が加わることはない」(ルネサス テクノロジ赤尾社長)としている。そこで、両社の研究開発パートナーである東芝、パナソニックの動き、とりわけ東芝の動きが注目される。

東芝も2008年1月に半導体の事業構造改革の柱として、システムLSI、ディスクリート事業に関して、「業界再編を視野に入れ、分社化含む抜本的構造改革」(西田社長)を行う方針を明らかにしていた。再編のパートナーとしては、最先端プロセスの開発パートナーであり、2007年11月には、両社の共同生産まで視野に入れて協議を進め、2008年中にも方針を決定するとしていたNECエレクトロニクスが有力とされていた。実際、統合間近、との報道もなされていたが、結果的にはNECエレクトロニスはルネサスとの統合を選択、外からみれば、東芝は肩透しされた状況となった。また、もう1つの候補である富士通マイクロエレクトロニクス(FML)についても、前述のように事業構造を転換しているところであり、パートナーとして考えることは難しい。

このような状況となったが、分社化の方向性を見直すという動きは出ていない。NAND型フラッシュメモリの持続的な強化のためにも、前述の事業、特にシステムLSI事業の構造改革は必須である。北九州工場の生産能力の大分工場への統合など生産能力の整理を進めているものの、さらに抜本的な改革が必要な状況には変わりはない。

単独での分社化、新たなパートナーとの合弁化といった可能性もある。また、NECエレクトロニクス-ルネサスの新会社は否定しているが、そこに東芝が加わることになれば、かつて経済産業省主導で進められていた「日の丸システムLSIメーカー」が現実のものとなることになる。

どのような方針になるにせよ、決定するまでに多くの時間は残されていない。すでに、後工程に関しては、仲谷マイクロデバイス(NMD)、米Amkor TechnologyとシステムLSIの後工程事業に対して、合弁事業を開始することについて基本合意している。2009年10月1日に合弁会社として事業を開始することを目指している。合弁事業の中核はNMDとなり、東芝はシステムLSI後工程事業の大部分を合弁会社に譲渡する。これにより東芝はシステムLSI事業の後工程に関してアウトソーシング化を推進する。

エルピーダメモリは台湾企業との関係強化

メモリ分野では国内唯一のDRAMメーカーであるエルピーダメモリが、台湾企業との協業を軸として戦略を強化している。同社はPowerchip Semicondutot(PSC)と生産委託で協業、生産子会社であるRexchip Electronicsも台湾に工場を設けている。

その台湾では経営危機にあるDRAMメーカーを救済、DRAM産業を維持、育成するため、台湾政府が出資する企業Taiwan Memory Company(TMC)を設立、同企業のもとで同国のDRAM企業の統合を行おうとしている。エルピーダメモリは2009年4月1日、TMCからテクノロジーパートナーとして選択されたことを発表した。エルピーダでは、「TMCの決定は、当社の高い技術力、および台湾におけるビジネスの実績を評価された結果と考えている。当社、TMCおよび台湾のDRAM企業それぞれにとって満足のいく結果を導きだせるよう最大限の努力」を行うとしている。しかし、現状では「台湾国内の情勢が落ちつくのを見守っている状況」であるという。

台湾との関係を強化する一方、日本でも産業再生法に基づく公的資金導入による資本増強に向けて当局との交渉も行っている。金融機関、政府に対して「日本にDRAM企業が1つもなくなってもいいのかを考えてもらいたい」(エルピーダメモリ坂本社長)として、話し合い、協力を求めており、今後の動向が注目される。

今回、表立って話題に上っていない、ほかの国内半導体メーカーも漏れ伝わるところでは、ラインの稼働率の低下などにより派遣従業員の解雇などを行っているという。苦しい台所事情はどこも同じようだが、日本の半導体メーカーは、総じて利益率が低いと言われてきた。再編により、そうした体質が変わり、骨太なメーカーに生まれ変わるのか、はたまた、単に寄り集まっただけの烏合の存在となるのか、いずれにせよ、国内半導体メーカーの再編は確定事項として動き始めていることだけは確かである。