米マサチューセッツ工科大学(MIT)の出版部門が発行する「Technology Review」が、「The 10 Emerging Technologies of 2009」と題して2009年に注目すべき新興技術トップ10を紹介している。医療分野やコンピュータ関連ソフトウェアで1年以内に実用化が見込まれるものもあれば、バイオやナノ技術で将来的に有望な基礎技術まで、今後われわれの生活に影響を与えそうなものが満載だ。ここでは、特にコンピュータ技術に関連する話題をいくつかピックアップして紹介していこう。

対話型情報検索システム - Intelligent Software Assistant

近年において、物事を調べるのにインターネット検索エンジンはなくてはならないものだが、これを発展させてより対話的に情報検索を行えるシステムを提案するのがIntelligent Software Assistantだ。

シリコンバレーのスタートアップ企業であるSiri創業者のAdam Cheyer氏が開発したシステムは、例えば週末の予定についてアシスタントに問いを投げかけると、天気情報やイベント情報を基にいくつかの候補を回答し、それに対してユーザーが対象を絞り込んでいくことで最終的に目的となるイベント情報の詳細を得られるというもの。ある程度の目的さえあれば、通常の検索エンジンより簡単に素早く情報にたどり着けるのが特徴だ。

Siri CEOのDag Kittlaus氏は「今後5年以内にすべてのユーザーがこのような仮想的なアシスタントを利用することになるだろう」と予測している。

3次元大容量メモリ - Racetrack Memory

最近では、HDDやSSDの大容量化と低価格化が急速に進んでいる。市場では2TBのHDDが出回りはじめたことが記憶に新しい。

だが、この大容量化カーブも10年ないし20年程度でストップすることになるだろうというのが研究者らの予想だ。プロセッサなど半導体の微細化があと数世代先で物理限界から壁に突き当たるように、微細化による大容量化に依存するHDDやSSDもまた、物理限界でその壁にぶち当たることになるのは必然である。

この限界とは、突き詰めれば大容量化技術がすべて2次元を前提に開発されているということに尽きる。米IBMフェローのStuart Parkin氏が提案する「Racetrack Memory」は、微細なナノワイヤの各部位に電子的なビットパターンを記録する特性をもたせ、これをU字型に立体的に配置、基板上に大量に並べることで一種の3次元メモリを実現しようというものだ。

U字の底面分には書き込み用と読み取り用の回路が1つずつ配置され、U字の両端から流す電気信号の極性を入れ替えることでナノワイヤ内のビットパターンを電気の力で移動させ、読み書き用の回路を通過させることでストレージとして機能させる。

HDDの大容量とフラッシュメモリの堅牢性、そして両者を上回るスピードを実現する技術だという。