--弥生 09では、サービスという点での進化が特徴だといえますが。

大きく「福利厚生サービス」と「一般仕訳相談サービス」を用意しました。

福利厚生サービスは、中小企業、個人企業では利用できないような福利厚生サービスを、国内最大手の事業者との協業で提供できるようになり、パートナーやユーザーから高い関心が集まっています。私自身、起業をしたときに、野村総研時代の同僚がジムを低料金で利用しているのがうらやましくてしかたがなかった(笑)。同じ思いをしている経営者は多いと思いますよ。社内では、有料で提供するという意見もあったのですが、最終的には私の独断で(笑)、保守契約しているユーザーは無料で利用できるようにした。私が強い思い入れをもって開始したサービスなんです。

もうひとつの一般仕訳相談サービスは、とにかく要望が多いサービスで、なんとか実現したいと思っていた。ただ、税理士の相談業務の範囲に踏み込む可能性があるため、実現できなかった。しかし、これも製品に付属している仕訳アドバイザー機能の範囲で、かつ、税理士の相談業務に踏み込まない範囲で仕訳相談に応じるということで可能になりました。いまは、限定的に試験サービスを開始していますが、これを来年の早いタイミングで本サービスへと移行したい。いまのところ、弥生会計 09の保守サービスを利用しているユーザーを対象に提供していく形を考えています。製品あるいは保守の新たな付加サービスという位置づけになります。

--12月から弥生会計09が発売になるにも関わらず、年内は限定的試験としているのはなぜですか。

どれぐらいの問い合わせがくるのか、どんな問い合わせがくるのかを検証したいという点があります。保守契約者には無料で提供しますが、大きな意味では保守という有料サービスのメニューのひとつですから、しっかりと対応できる体制を確立する必要がある。札幌と大阪のカスタマセンターの体制も強化し、対応していくことになります。いまのところ、想定以上に質問の内容がシンプルですし、問い合わせ件数もだいたい読めるようになってきた。本サービスにはスムーズに移行できると考えています。

どの新サービスについても、「弥生ブランドの下で展開するからには、品質/サポートともに万全の状態で出す必要がある」(岡本氏)

--弥生では、すでにSaaS事業への進出を明らかにしています。進捗はどうでしょうか。

もう少しシンプルに使いたい、手軽に使いたいというユーザーに対して、SaaSは適しているといえます。起業家も対象になるでしょうし、中小企業ユーザー、個人ユーザーにとってもメリットのあるサービスです。経済産業省のプロジェクトによるSaaSはどちらかというとダウンロード型に近いものですが、これは来年春には提供できるでしょう。ただ、当社が独自に進めているサービスは、完全なSaaS型となりますから、もう少し時間がかかります。現時点では、2010年9月までにはサービスを開始する計画で進めているところです。

完成度の低いβ版を先に出して、とにかく使ってもらうというようなことは考えていません。むしろ、「弥生」のブランドがある限り、下手なものは出せない。β版を提供する際には、問題点を確認するものではなく、問題がないことを確認するための完成度にしたい、そう思っています。データを預けていただくわけですから、ブランドの信頼感、安心感はより大切なものになるでしょう。70万ユーザー実績を持つ弥生の認知度を、SaaSによって、より高めていきたいですね。現時点では、どれだけの利用率になるかはわかりませんが、ビジネスの柱という規模になるに、最低でも数万ユーザーでの利用が必要でしょうね。SaaSの開発チームは、パッケージの開発チームとは別の体制を確立し、独自にノウハウを蓄積しています。長期的な視点で事業を育てていきたいですね。