近年、携帯電話やカーナビゲーションシステム、デジタル情報家電といった先進的な組み込み機器が市場に続々と登場するようになり、ユビキタス社会の実現がいよいよ現実味をおびてきました。

厳しい市場競争の中、各企業はより高度化するユーザのニーズを満たす製品やサービスを、より短いリードタイムで提供する努力を続けています。その結果、組み込みシステム上で稼動するソフトウェア――組み込みソフトウェアの複雑化および大規模化が進んでいます。その一方で、開発現場では開発サイクルの短縮や開発コストの削減、品質向上といった大きな課題に直面しています。

こうした背景の中、これらの課題の解決策として、さまざまな開発手法や開発ツールなどとともに、ブラウザ、アプリケーション実行環境、データベースといったミドルウェアの重要性が高まってきています。とくに、組み込みシステムにおけるデータ管理という観点では、サービスの高機能化、ストレージ容量の大規模化とともに、従来では扱わなかった音声や画像、映像、地図データといった大容量で複雑なデータを管理することが求められてきています。

これまで組み込みシステムにおいては、こういったデータの管理にファイルシステムを用いていました。しかし、大容量化および複雑化していくデータをこれまでと同じ手法で管理していくことは、すでに困難な状況にあります。

こういった大容量かつ複雑なデータを高速に処理できるデータ管理ソリューションとして、組み込みシステム向けのデータベースである「組み込みデータベース」への注目が急速に高まってきています。

現在、組み込みデータベース市場はまだ初期導入の時期にあります。組み込みシステムのさまざまな要件に対応するために、各社から多種多様な組み込みデータベース製品が提供されています。

本稿では、この組み込みデータベースについて、実際に出荷されている製品を例にしながら解説を進めていきます。