さて、ここからは省電力の話である。Clock GatingやPower Gatingは当然の話で、Trinityの場合は、

  • Compute Module毎にPower Gatingを可能とする。
  • 画面リフレッシュの場合はDRAM 1chのみで動作する。
  • 画面用のディスプレイメモリのバッファを増加させてDRAMアクセス頻度を削減
  • 細かなPower Tuningを実装。

といった形で、ノートPCで最大11時間のバッテリー寿命を可能にするとしている(Photo21)。個々の項目は割りと細かいのだが、これを積み重ねた結果としてTrinityはLlanoと比べて細かく消平均消費電力を下げることに成功したとされる(Photo22)。

Photo21: "Windows Idle"でのバッテリー寿命なので、動作させているとここまで持たないのは当然の事である。

Photo22: 個々の数字は先にPhoto04にも出てきたが、これは35WのCPU同士(A10-4600M vs A8-3600M)を比較しての実際の消費電力である。

さて、ここからはAMDの公表した性能比較である。WinZIP(Photo23)では純粋なCPU演算能力の比較、Photoshop CS6(Photo24)ではCompute Shaderでの性能比較、同じくvReVeal(Photo25)もCompute Shaderの効果が大きい。Photo26は3DMark Vantage/3DMark11のPerformance Profileでの比較、Photo27は他の様々なテストの平均値である。Photo28はDX9/DX10世代のゲームを内蔵グラフィックで行った場合の比較である。Photo29はBattlefield 3の実フレームレートが、Photo30はDirt 3の実フレームレートがそれぞれ示されており、このあたりのゲームで相当自信があることを示している。このDirt 3に関しては、細かく設定を変えた場合の数字も示されており、「平均55%の性能改善」と説明されている(Photo31)。また同様に他のゲームについてもフレームレートが示されている(Photo32)。

Photo23: WinZIP 16.5は拡張命令を利用するが、Core i5との比較なのでこれは同等であり、なので純粋にCPU処理能力の比較となる。

Photo24: こちらはPhotoshop CS6に搭載されるGPU対応フィルタを利用した例である。これもバーが短いほど高速である。

Photo25: vReVealでは単純に手振れ補正だけだとそれほど差が出ないが、ワンタッチ補正で複数のフィルタを噛ます場合に大きな性能差が出ると説明される。

Photo26: IntelはまだIvy Bridgeをノートに積極的に展開していない関係で、このテストはSandy BridgeベースのマシンにRadeon HD 7550Mを追加した場合も示されている。

Photo27: Compute Shaderの比較はさすがにどうかと思う。

Photo28: 本当はフレームレートを明示してほしいところではある。

Photo29: さすがに内蔵だけだと33fpsとかなり苦しいところ。

Photo30: もっとも40.93fpsで十分か? といわれるとそれもちょっと微妙な感じが。もう少し描画オプションを落としてフレームレートを上げたいところ。

Photo31: 性能差を考えるともう少し差があっても良さそうな気もしなくはない。

Photo32: まぁこのテストは、本来Ivy Bridge相手に行うべきだった気もする。

Photo33はAPUにGPUを追加してのCrossFire動作をさせた場合に、どれだけ性能が向上するかを示したもので、ものによって差はあるが概ね30~40%程度の性能上乗せがあると同社は説明する。

Photo33: 当然ゲームによって効果はかなり変わるが、ピークで80%あまりの性能アップなのはかなり効果的ではある。

次が消費電力比較。AMDによれば、急速に消費電力を改善したと説明している(Photo34)。その一例として、Core i5-2410MとA10-4600Mを比較したのがこちら(Photo35)である。

Photo34: これは構成にもよるから一概になんとも言えない、というのが正直なところ。ただAMDにせよIntelにせよ、2チップ構成としてはかなりぎりぎりまで詰めてきているから、この先大きな展開は完全に1チップ化とかメモリチップまで集積など、携帯電話的な技法を取り入れない限り難しいだろう。

Photo35: ただこの話は、TDP 17Wの製品同士で比較しないとあまり意味がない気もするのだが...。

ということで、いよいよラインナップの説明である。先ほどから何度も話が出ているが、今回AMDは新たにA10というシリーズを追加した。ラインナップはそんなわけでAMD FXからA10/A8/A6/A4/E2まで合計6種類となる。また、A4~A10向けにはUltraThin向けのラインナップも用意される(Photo36)。このうちAMD FXはデスクトップのみなので無関係として、AMD AシリーズとIntelの競合製品とのセグメント分けとされるのがこちら(Photo37)である。またUltraThin向けには専用パッケージも用意しており(Photo38)、これを使った製品も多く予定されている(Photo39)という説明があった。Photo40が通常のもの、Photo41が薄型パッケージだそうだ。

Photo36: 通常のフォームファクタ向けのものは黒字に赤帯が入り、そこに白抜きでVISIONの文字が入るロゴ、一方UltraThin向けは右端のように、グレーベースの地に白帯が入り、赤抜きでVIDIONの文字が入るロゴが使われるとのこと。

Photo37: さすがにCore i7のトップエンドとは直接競合できないと判断しているようだ。

Photo38: UltraThinに向けに薄型パッケージが用意されているとのこと。ちなみに以前UltraThinの定義を(どなたに尋ねたか失念してしまったのだが)聞いたところ、「厚みが概ね20mm以下」という返事をもらった事がある。

Photo39: 日本で行われた事前説明会の席で、Samsungの試作したUltraThin Noteを披露するKevin Lensing氏(Director, Notebook Product Line)。

Photo40: こちらがFS1r2のパッケージ。Mobile向けということでヒートスプレッダはなし。

Photo41: こちらが薄型のFP2パッケージ。FS1r2はピンだが、こちらはBGA。

さて、Photo42が具体的に今回発表された製品ラインナップだ。今回はMobile向けということで、通常フォームファクタ向けにA10/A8/A6が各1製品、UltraThinに適したTDP 25W/17WのものがA10/A6各1製品の合計5製品のみとなっている。また、これと組み合わせるDiscrete Graphicsはこんな具合(Photo43)。既存のLlanoベースの構成との比較はこちらである(Photo44)。

Photo42: これに続く製品は「もうちょっと先」との話であった。またDesktop向けについては「時期が来たら」とされている。ちなみに2コア製品に関しては、当面は同じ4コアと同じダイを使うとかで、2013年以降はまたそのときに応じて考えるという話だった。

Photo43: こちらでも報じた通り、今年4月にGCNを搭載した新しいRadeon HD 7000Mシリーズを発表しており、これと組み合わせる形。AMDの場合は異なるアーキテクチャ同士でのCrossFireが問題なく可能だから、これでいいのかもしれないが。

Photo44: 既存のLlanoプラットフォーム(左側)と、これに対応するTrinityプラットフォーム(右側)を比較したもの。AES-acceleration云々は、Piledriverコアに搭載されるAES命令が使える、という話。

最後に「まもなく」登場するBrazos 2.0の話。基本的にはMinor Refreshmentではあるのだが、若干動作速度が上がるほか、GPUコアも多少強化され、またFCHがUpdateされることが明らかにされた(Photo45)。

Photo45: とはいえ、たとえばGPUは開発時期を考えればGCNではなく(Trinity同様の)VILW4ではないかと思われる。