富山地方鉄道を舞台とした映画『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』が、12月3日から全国公開される(富山県では先行公開中)。鉄道ファンにとっては、かつて西武特急レッドアローとして活躍した16010形がスクリーンに登場するのも楽しみのひとつだろう。

他にも富山地鉄の車両たちがたくさん登場するし、ちょっとだけ富山ライトレールも登場する。富山地方鉄道だけでなく「ポートラム」まで見られるなんて、お得な作品といえそうだ。

富山ライトレール富山港線「ポートラム」

富山ライトレール富山港線は、富山駅北~岩瀬浜間を結ぶ約8kmの路線だ。かつてJR西日本が運行していた富山港線をLRT化し、富山市を主体とした第3セクターに経営を移管した。富山地方鉄道も富山ライトレールに出資しており、両社は少なからず縁があるといえる。

しかも歴史をたどると、なんと富山港線も富山地方鉄道だった時期があるというのだ。

5カ月間だけ富山地鉄の路線だった

いまや近未来的なLRT車両が走る富山港線だが、その歴史は意外に古い。開業は1924(大正13)年で、富岩鉄道の手によるもの。社名はもちろん、「富山」と「岩瀬浜」から取ったものだ。

第2次世界大戦直前の1941(昭和16)年12月1日、富山電気鉄道がこの路線を引き受けることになった。富山電気鉄道は富山地方鉄道の前身で、当初から富山県の鉄道を統合する構想を持っていた。富山電気鉄道は富岩鉄道のほか、富南鉄道(現在の富山地鉄不二越線)、立山鉄道(現在の立山線の一部)を合併し、1943年には戦時合併政策で加越鉄道、富山県営鉄道、黒部鉄道、富山市営鉄道などを合併。社名を富山地方鉄道とし、富山~岩瀬浜間は富山地方鉄道富岩線となった。

JR時代の富山港線。直流電化の路線だがディーゼルカーも活躍していた

鉄道の戦時合併といえば東急や阪急が有名だが、同じことが富山でも行われていたのだ。

しかし、富山地方鉄道としての富岩線の歴史は短かった。国家総動員法のもと、富山地鉄の発足からわずか5カ月後に富山~岩瀬浜間は国有化され、国鉄富山港線になった。北陸地方の国鉄(後のJR)路線の多くが交流電化、または非電化だったにもかかわらず、富山港線が直流電化だった理由は、もともと私鉄だったからだ。

富山港線は2006年にLRT化され、富山ライトレールが発足。車両や駅施設を一新し、運行本数も増やして成功している。新時代の路面電車として全国から注目され、公共交通のお手本と呼ばれるまでになった。

「RAILWAYS」トリビア : シリーズ第2弾にも一畑電車が!?

ところで、「RAILWAYS」シリーズ第2弾となる映画『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』に登場する私鉄は、富山地鉄や富山ライトレールだけではない。

同作品の舞台は富山市。前作『49歳で電車の運転士になった男の物語』の舞台だった島根県出雲市とは、直線距離で400km以上も離れている。ふたつの物語は独立しており、連続性もない。しかし、前作を見た人が『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』を見たら、思わずニヤリとしてしまうだろう。なんと同作品にも、一畑電車のデハニ50型電車が一瞬だけ"出演"しているのだ。

『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』
富山地方鉄道の運転士、滝島徹は1カ月後に定年を迎える。第2の人生を、自分を支えてくれた妻とのんびり過ごしたい。しかし、妻の佐和子も第2の人生を考えていた。結婚前に勤めていた看護師の仕事を再開したい。初孫を2人で迎えてほしいと願う娘の心も届かず、夫婦の心はすれ違い、妻は家を出てしまう……。立山連峰を望む美しい街を舞台に、夫婦が迎えた人生の分岐点を描く。
出演 : 三浦友和、余貴美子、小池栄子、中尾明慶、吉行和子ほか

どの場面に、どんな形で出演しているか。それは映画を見てのお楽しみ。映画公式サイトで公開中の予告編動画にもヒントが隠されているので、ぜひ探してみてほしい。