鉄道車両の運転士は加速と減速の操作をする。しかし、自動車のように右折や左折の操作はしない。ポイントが進路を決めてくれるからだ。そのポイントの操作は駅の信号係員が行う。最近は集中制御センターで各駅のポイントを一括して操作する方式も増えてきた。ところが、鉄道と線路が交差する路面電車の場合は、電車の運転士がポイントを操作するという。一体どんな仕組みになっているのだろう。

長崎電気軌道「公会堂前」交差点にある分岐方向指示器

長崎市の交差点に妙な信号機がある。黄色い文字で「左」「右」が一定間隔で点滅する。これは路面電車の運転士に向けた信号機だ。この交差点「公会堂前」は丁字路になっており、この信号機は丁の字の縦線方向から突き当たる部分にある。

「操作スイッチ」は架線についている

交差点に近づいた電車が右折または左折するためには、ポイントを操作する必要がある。しかし、周囲を見渡してもポイント係員はいない。自動車が行き交う交差点のため、「予期せぬ事態」を考えると遠隔操作は危険だ。そこで、電車の運転士が自らポイントを操作する。といっても、運転台にはポイント操作に関するスイッチはない。スイッチはなんと、架線についている。

写真の信号機が「右」を示している時に電車を前進させると、パンタグラフが架線に取り付けられたスイッチに接触して、ポイントが右に切り替わる。「左」の時も同様だ。信号機が「左」を示している時に電車を進めると、パンタグラフがスイッチに接触して、ポイントが左に切り替わる。この操作はタイミングが重要なので、「左」「右」の表示の下に時間の残量を示すゲージが表示されている。

このほかにも、架線上に2つのスイッチを少し離して設置する方法もある。電車が通過して、2つのスイッチに短時間で接触したら直進、1つ目のスイッチを通過して停車し、時間が経ってから2つ目を通過すると分岐、という手順で使う。