「カロリーゼロ飲料」はダイエットをサポートしてくれるのだろうか?

ダイエット中は、スイーツや清涼飲料水など「糖分」を我慢することが基本。でも、何となく口さみしい……。そんなときに、手に取りがちなのが「カロリーゼロ」と表記された飲料だ。カロリーゼロ飲料は、ビールやダイエットコーラ、ソーダなど種類も豊富。きちんと甘味があるのにカロリーがないことで、「ダイエット中にいくら摂(と)っても大丈夫」と思っている人も多いことだろう。

しかし、カロリーがないからといって頻繁にカロリーゼロ飲料を飲んでいたら、逆に太るリスクがあるという。今回は、「カロリーゼロ」の甘さの正体と注意点について、医療法人社団一信会 ティーアイクリニック 理事長の田原一郎医師にお聞きした。

「カロリーゼロ」に惑わされない!

まず「カロリーゼロ」と銘打つ食品は、必ずしもカロリーがないわけではないことを知っておこう。厚生労働省の栄養成分表示のルールでは、100ml(g)当たりの糖質が0.5g未満の食品は「ゼロカロリー」「カロリーゼロ」「ノンカロリー」「無糖」「シュガーレス」などと表記できる。つまり、カロリーゼロだからと思って飲みすぎていたらカロリーオーバーだった、という事態もあるので注意が必要だ。

また独特の甘さの正体は、砂糖の代わりに用いられる「人工甘味料」。人工甘味料には「スクラロース」「アスパルテーム」「アセスルファムカリウム」などいくつか種類があり、飲料以外にも菓子やゼリー、調味料などに使用されている。

カロリーゼロなのに「逆に太る」理由

「ダイエット中は、甘い物は我慢! 」という思いがあるからこそ、「カロリーゼロなのに甘くて満足感がある」食品の誘惑にはまる人も多いだろう。ただし、それらに含まれる人工甘味料は、ダイエットのサポートになるどころか、逆に太るともいわれているのだ。

カロリーがないのに太る可能性について、田原医師は次のように解説する。

「糖分を摂ると食後血糖値が急上昇しますので、それを下げようとすい臓から『インスリン』が分泌されます。このインスリンは脂肪細胞に働きかけ、血中のぶどう糖を脂肪に変えてため込む働きがあるので『肥満ホルモン』と呼ばれます。現在、カロリーゼロ飲料などに多く使われる人工甘味料も、インスリン分泌を促すことがわかってきました。ほかにも『グレリン』など、さまざまな脂肪をためこむ性質があり、食欲増進などに関わるホルモンの分泌が指摘されています」。

味覚の鈍化、依存性も指摘

さらに、人工甘味料が味覚の鈍化や依存性を招くことにも言及。「間接的には、人工甘味料を摂りすぎると甘味の味覚が鈍り、摂取量が多くなるリスクがあります。また、神経伝達物質の『ドーパミン』などが乱れることにより、甘味に対する依存性が高まるという指摘もされています」。

これらの理由から、「たとえカロリーゼロだとしても、ダイエットには不向きと言えるでしょう」と語る田原医師。もしダイエット中に甘い物が食べたくなった場合は、「てんさい糖など、自然の作物から精製されていて『高GI食材』(食後血糖値の急上昇を促すもの)ではない糖質を用いるほうが比較的安全ではないでしょうか」とアドバイスをくれた。

甘い物が好きな人にとって、ダイエット中の"甘い物断ち"はつらいもの。ついカロリーゼロ飲料に手が伸びることもあるかもしれないが、その行為によって、太るリスクや味覚の鈍化、甘味への依存性を招くとしたら注意しなければならない。例えば「甘い物の解禁日を設ける」といった他の方法で、ダイエット中もストレスなく過ごせるとよいだろう。

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記事監修: 田原一郎(たはら・いちろう)

医療法人社団 一信会 ティーアイクリニック 理事長

平成11年に日本医科大学医学部を卒業後、日本医科大学附属病院 第一外科に勤務。平成19年より平成立石病院や都内美容クリニックなどで実績を積む。 平成24年に医療法人社団 一信会 ティーアイクリニックを開院。同クリニックが監修する糖質制限食専門レストラン「TI DOCTORS RESTAURANT(ティーアイドクターズレストラン)」のオーナーも務める。


医学博士
日本医科大学大学院 分子生物学分野
学位論文;Systemic Cancer Gene Therapy Using Adeno-associated Virus Type 1Vector Expressing MDA-7/IL24
アメリカ遺伝子治療学会にて講演後、Molecular Therapy(Impact Factor 7.149)掲載
日本外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医