いまから37年前の1974年9月、珍しい臨時電車の存在を知り、撮影に行きました。「休日のみ、たった1駅しか運転しない」「パンタグラフ部分の屋根が低い」、そんな情報をもとに向かったのは、中央線高尾駅。そこに停まっていたのは、101系の相模湖行き臨時電車、通称「相模湖臨」でした。

相模湖駅2番線に到着直後の101系「相模湖臨」。1974年9月

「相模湖臨」は、その名の通り、相模湖へのレジャー客向けに設定された臨時電車で、中央線高尾~相模湖間の1駅間を走っていました。使用される車両は、武蔵小金井電車区(現・豊田車両センター武蔵小金井派出所)の101系7連で、800番台の車両を2両組み込んだ編成を限定使用していました。

高尾駅以西の中央本線には、明治時代に造られ、断面が小さいトンネルがあります。この区間への入線を考慮し、パンタグラフの取り付け部分のみ屋根を低くした車両が101系800番台です。

101系800番台の低屋根部。パンタグラフがある低屋根部の先に、先頭車両の連結面上部がよく見える

低屋根部ドア上のルーバーは通風口で、車内のファンデリアにつながっていた

1974年9月の時刻表によると、「相模湖臨」はレジャー客の足に合わせて、午前中2往復、午後4往復、計6往復で休日のみの運転でした。時刻表に記載された「休日のみ運転」の注意書きに、当時の世相が見えてきます。

いまや週休2日が当たり前になり、レジャー客向けの臨時列車は「土曜・休日運転」がほとんど。しかし1974年当時、土曜日は午前中まで仕事や授業があり、午後から休みになる「半ドン」でした。土曜日の朝から出かけるレジャー客は少なく、そのため「休日のみ運転」となったようです。

その後、「相模湖臨」は1日5往復となり、1983年9月に廃止となりました。

中央線高尾駅で発車を待つ103系特別快速(写真左)と、101系快速(同右)。ともに東京行。1974年当時の「新旧の主役」が顔をそろえた。写真の101系は、埋め込み式テールライトの初期車

「相模湖臨」の始発・終着駅だった高尾駅は、当時から東京行の快速や特別快速が発着し、同駅以西からやって来る普通列車が折り返すだけでなく、新宿駅まで直通する普通列車もあるなど、さまざまな列車が行き交う駅でした。

中でもびっくりしたのは、客車の普通列車が走り、都心の新宿駅まで運転されていたこと。さらに「山スカ」の姿も……。その模様は後編で紹介します。

※写真は当時の許可を取って撮影されたものです
松尾かずと
1962年東京都生まれ。
1985年大学卒業後、映像関連の仕事に就き現在に至る。東急目蒲線(現在の目黒線)沿線で生まれ育つ。当時走っていた緑色の旧型電車に興味を持ったのが、鉄道趣味の始まり。その後、旧型つながりで、旧型国電や旧型電機を追う"撮り鉄"に。とくに73形が大好きで、南武線や鶴見線の撮影に足しげく通った