この連載では、デスクトップ型のPCを自作するうえで必要最低限の知識やテクニック、応用として自作したPCの簡単なカスタマイズ方法などを、実際に自作する際の手順に沿って紹介していく。連載を参考にパーツを入手、組み立てていけば、初めての人でも問題なく自作PCを完成させられるだろう。

今回は基礎知識編の最終回だ。残る主なパーツの最新トレンドを紹介したい。

光学ドライブ : 低価格なBDドライブに注目

ASUSTeKのBDドライブ「BC-1205PT」。BD-R/REへの書き込みには対応しないが、増えつつあるBDコンテンツを視聴することができる

ASUSTeKのDVDスーパーマルチドライブ「DRW-2014L1T」。DVD±R/RW DLへの書き込みに対応。ラベル作成機能のLightScribeも実装している

光学ドライブはCD/DVDなどを読み書きするためのドライブで、OSやアプリケーションのインストールに必要になるため欠かせないパーツの一つだ。主流はDVD±Rの読み書きに対応した、DVDスーパーマルチドライブとなる。この価格は、ほぼ下げ止まりに近い状態になっている。高速に書き込みできることを売りとするドライブであっても、かなり安価に入手できるようになっているので、付属ソフトなどの付加価値の善し悪しで製品選びをするのがいいだろう。

また、一歩上を目指すならば、Blu-ray Discに対応したドライブを選択するのもいい。BDドライブは以前は5万円を超えるような高価なものであったが、最近では読み出し専用であれば2万円前後のものも登場している。BD-REへの書き込み対応ドライブでも3万円前後と、徐々に価格が下がっているので、かなり現実的に検討できる存在になっている。また、今年に入って、次世代メディアの規格競争が事実上終焉。BDへ一本化したことも、選択しやすい要素といえる。

なお、接続インタフェースはシリアルATA化が進行中だ。依然としてIDE(ATAPI)接続のものも存在しているが、チップセット側のIDEサポートが縮小傾向にある今、新規に購入するドライブをIDE接続にする必要性は低いといえる。

ケース・電源 : ハイエンドCPUやグラフィックスカードを選ぶ際に注意

クーラーマスターの「Centurion 590」。前面部がすべてメッシュになっており、ケース内の冷却性を高めている

同じくクーラーマスターの750W電源「Real Power Pro750W」。ハイエンドグラフィックスカードを使用するなら、このぐらいの電源を用意すると安心感がある

ケースはPCのシステムを収納するもの、と考えればいい。非常に大きなものから、小型のものまで存在するが、利用するマザーボードのフォームファクターに準拠したものから選択する必要がある。フォームファクターとは、マザーボードのネジ位置や大きさなどを規定したもので、一般的なサイズではATXやMicroATXなどがあり、小型PCではMini-ITXも利用されている。このフォームファクターに準じたケースのなかから、ドライブを収納するベイの拡張性や価格、デザインといった要素を織り交ぜて検討していくことになる。

一歩進んで検討するならば、CPUクーラーやグラフィックスカードクーラー、HDDなどが発する騒音を遮断する工夫が盛り込まれたケースを考慮するといいだろう。静音性の高いケース、などと評価されていることが多い。

また、ケースという閉ざされた空間であるため、PCが発する熱をしっかり外へ逃がすことができるよう設計を工夫した製品もある。こうした製品は概して作りがしっかりしていることが多く、やや割高になる傾向にある。だが、PCケースは中身だけを入れ替えて継続的に使うことができるパーツでもあるので、思い切って良いものを買っても長く愛用できるのではないだろうか。

このケースに付属していることも多い電源ユニットも、場合によっては単体で購入することを考えたいアイテムだ。電源ユニットの役割は、交流で提供される電源を直流に変換してPCで利用する電圧を作り出すためことにある。この変換できる電源容量は、製品によって限界が設けられており、一般に電源容量が大きいほど高価になる傾向にある。

パーツの組み合わせにもよるが、大雑把に分類して、メインストリーム向けCPUとミッドレンジグラフィックスカードまでの組み合わせなら400W程度、メインストリーム向けCPU+ハイエンドグラフィックスカードなら500~600W程度が目安といえる。もっと良いパーツを搭載するなら700W以上の製品を検討する必要もある。

400~500W程度で十分な環境であれば、電源ユニットが付属するケースを選択して、そのまま利用するものいいだろう。ただ、電源ユニットの単体製品には、静音性を考慮していたり、部品の厳選して信頼性を向上させているものもある。PCの土台を支える大事なパーツであるだけに、思い切って品質の良いものを選択して安心感を買うのも良いと思う。

また、電源ユニットを買うときには「80 PLUS」というキーワードも覚えておきたい。電源ユニット内で交流と直流の変換を行う際には、どうしてもロスしてしまう電力が発生する。この80 Plusとは、ロスせずに利用できる電力が80%以上であることを示すもの。ロスした電力は熱として放出されるのでPCにとってはあまりよろしくないし、無駄な電気を使わないというエコロジーの視点でも意味あるロゴマークなのだ。

その他、OSなど : 地デジチューナーも興味深い一品

ASUSTeKの22型液晶「VK222H」。上部にWebカメラを内蔵するユニークなモデル。DVI端子はHDCPにも対応している

バッファローの地デジチューナー「DT-H50/PCI」。録画したコンテンツのBD書き出しにも対応している

自作PCにおいて必要となるパーツは以上のとおりだ。このほか、FDDやカードリーダーなどを必要に応じて追加していけば良いだろう。また、キーボード、マウス、ディスプレイといったユーザーインタフェース関連デバイスも必要となるが、基本的には自作PCとの深い関わりのない話なので、ここでは深く追求しない。

ただし、ディスプレイに関しては一つ留意しておきたいポイントがある。それは、インタフェースと著作権保護機能だ。PCとディスプレイを接続するインタフェースとしては、アナログがD-Sub15ピン、デジタルがDVIが主に使われている。液晶ディスプレイが一般化した現在にあっては、DVI接続しているユーザーが多いだろう。

このDVI端子に変わるインタフェースとして、HDMIやDisplay Portというものが存在する。いずれも映像と音声を一本のケーブルで転送可能なデジタルインタフェースである。前者は主に一般のテレビ製品との接続に利用されることが多くなっている。DisplayPort対応製品もグラフィックスカード、PC用ディスプレイともに姿を見せつつあるが製品数は多くなく、とりあえずPC用ディスプレイとの接続については、しばらくはDVIが主流のまま続きそうな見込みだ。

このDVIインタフェースのスペックにも注目するようにしたい。とくに、最近では当たり前になりつつあるが、HDCP対応のものを選んでおくのが無難である。HDCPとはコンテンツの著作権保護に関する技術で、例えば、Blu-ray Discを再生する場合には、HDCPに対応したグラフィックスカードとディスプレイが必須となる。

さらに、今年に入ってPC向け地上デジタル対応テレビチューナーが登場しているが、これをデジタル接続で利用するためにもHDCP接続が必須だ。PC向け地上デジタルチューナーの解禁も今年の自作シーンにおいては重要なトピックになっている。地デジの数少ないメリットであるハイビジョン映像を記録したい向きには、低価格化が進む大容量HDDと組み合わせて利用すると良いだろう。BDへの書き込みに対応する製品もあるので、BDドライブの搭載を検討している人は活用の幅が広がる。

最後にOSであるが、Windows XPの一般向け販売が終了している今、導入するのであればWindows Vistaという選択肢を選ぶのが現実的になる。DSP版と呼ばれる、パーツとともに購入することで割安になるパッケージがある。これは、一緒に購入したハードウェアで利用する必要があるというライセンス上の制限が付くためで、機能面は通常のパッケージ版と同じである。自作PC製作に合わせて一から揃える場合、例えばHDDと一緒に購入すれば、そのHDDにインストールして利用することになるはずなので、ライセンス上も問題なく利用できるのである。

(機材協力 : ASUSTeK Computer)