「あなたはそのままでいい。自分らしく生きていればいつか運命の男性が現れるよ」。こんな甘い恋愛アドバイスに真っ向から反論する男がいます。その名は、"ギターを教えなくても稼げるギター講師"こと清水邦浩くん。「恋のお師匠・ジュテーム清水」の変名も持つ彼は断言します。
「恋愛は楽器演奏と同じ。正しい方法論にのっとって努力(練習)を重ねることで必ずうまくなります。自己流のやり方で彼氏ができないのであれば、僕の方法を試してみてください。運命なんて今すぐ変えられますよ」
ギター教室の生徒たちの恋愛相談を受け続けて10年。清水くんはついに「恋愛力を高める方程式」にたどりつきました。音楽とビジネスの理論を組み合わせて編み出したその方法論を惜しみなく公開します。
ブライダルの仕事で幸せなカップルを毎週見るのがツライ
「結婚式のお手伝いは好きな仕事です。土日はほとんど出勤で、挙式の介添えから披露宴のサービスまで何でもやっています。20代の頃は自分自身は結婚式をしないでいいと思っていたのですが、最近は『家族のためにも式はしたほうがいい。家族って大事』と感じるようになりました。30歳を過ぎてからは、若くて幸せそうなカップルを毎週のように目の当たりにするのがちょっとツライです。まだ独身の私って本当にダメだな、女性としての魅力がないんだな、と思ってしまいます」
ここは愛知県蒲郡市にあるコーヒーショップ「喫茶スロース」の2階。清水くんの恋愛指南を求めてやってきたのは、ブライダル関連の会社に勤務するユリさん(仮名、32歳)です。早速、率直な悩みを告白してくれるユリさん。清水くんは無理に慰めるようなことはせず、淡々と状況を聞き取っていきます。
ユリさんによれば、男性関係は皆無なわけではなく、2年前に出会って月1ぐらいのペースでデートをしていた男性、ケンジさん(仮名、35歳)がいるそうです。"デートをしていた"と過去形なのが気になります。
「母親同士のつながりで紹介されました。彼の弟が私の同級生で、昔から名前だけは知っていたんです。実際に会ってみたら、私好みの地味で真面目な人。『付き合ってもいいかな』と思いました。でも、もう2年も経つのに彼女になれていません。『ちゃんと付き合って』とお願いしたこともありますが、『付き合うつもりはないよ。30歳を超えたおじさんとおばさんが今更ねぇ』と言われてしまって……。都合のいい女になっちゃいけない、と思ってこの3カ月間は会っていません」
「付き合う前に体の関係にはなりたくない」は間違いだったのか
メモを取りながら黙って聞いていた清水くんが顔を上げました。どうしても確認したいことがあるのでしょう。
「体の関係にはなったんですか? 」。ちょっと露骨すぎる質問ですが、清水くんは真剣に聞いています。確かに、大人の男女にとって身体的接触の有無はキーワードの1つですよね。そして、「なってはないです」と照れながらもちゃんと答えてくれるユリさん。
……じゃあ何はしたの? と突っ込みたくなりますよね。「チューはしたの? 」と重ねて聞く清水くんに対し、ユリさんは「チューはしちゃいましたね」とぶっちゃけました。
「最初の頃は、『(体を)触らせてほしい』とよく言われていました。不器用な人なので『好きだ』の言葉もなく求めてくるんです。私は付き合ってからじゃないと体の関係にはなりたくないので嫌がっていました。でも、2年間も一緒にいるのに引っ張り過ぎかな? と思い直して、ちょうど3カ月ぐらい前に、ドライブの途中でラブホテルがあったので『入りますか? 』と誘ったんです。すると、『いや、いい』と拒否されてしまいました。鉄は熱いうちに打っておくべきだったのでしょうか? 」
今の段階では清水くんは完全に傾聴モード。「出会ったばかりで押し切られて体の関係を持っちゃったら、ユリさんはケンジさんのことがより好きになるけれど、ケンジさんの気持ちと態度は変わらないかも」との感想にとどめました。
「私が『手をつなぎたい』と言っても断られるのですが、彼がつなぎたいときはつないであげないとスネてしまいます。あと、あまり頻繁に連絡すると避けられるので、月1ぐらいのペースでしか会えません。時間の無駄だと思って『もう会うのをやめよう』と伝えると、なんだかんだ連絡が来る。それで、どっちつかずの関係がダラダラと続いています。一緒にいて楽なところもあるから続けてきたけれど、そろそろ限界。何も言わず、本気でフェイドアウトしようかと思っています」
ジュテーム・メソッドを実践すれば1カ月以内に彼氏ができる!?
結婚願望がある女性と親しく交際しているのに2年間も行動を起こさないのは「男気」がなさすぎますよね。あきれられ、切り捨てられて当然でしょう。そばで聞いていた僕はケンジさんに怒りすら覚えましたが、ユリさんは赤裸々に話してさっぱりとした表情です。
そして、清水くんはなぜか会心の笑みを浮かべました。「すごくイイですね!! ケンジさんには『当て馬』になってもらいましょう。ユリさん、ジュテーム清水のメソッドを実践すれば、1カ月以内に彼氏ができますよ! 」
清水くん、そんなことを言って大丈夫なのでしょうか? とはいえ、元来は明るくてノリがいい性格のユリさん。清水くんの言葉を聞いて嬉しそうに笑っているのを見ると、幸せになってほしいなぁと願わずにはいられません。次週からは、ユリさんに対する清水くんの具体的な恋愛アドバイスが始まります!
<著者プロフィール>
大宮冬洋(おおみや・とうよう)
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。読者イベント「スナック大宮」を東京と愛知で不定期開催。食生活ブログをほぼ毎日更新中。
<協力者プロフィール>
清水邦浩(しみず・くにひろ)
ギター講師。愛知県岡崎市・蒲郡市で清水邦浩ギター・ウクレレ教室を経営。