今回のテーマは価格。ムダなコストを抑えるためにも、必要なグッズと適切な価格を整理してみましょう。ポイントは、栽培方法と植物の種類です。

まず、栽培方法は「土耕」か「水耕」に大別され、土耕はその名の通り土に植える方法で植物本来の姿で育てることが可能ですが、土中の菌類による病気や土の手入れが必要なため、手間がかかるのがデメリットです。

対して水耕は、土の代わりにハイドロコーンやロックウールを使用する方法で、衛生的でメンテナンスが容易なのがメリットですが、化成肥料に頼らざるを得ず、完全な無機栽培となってしまうのが気になるところです。また、屋外では養液の温度や濃度が変わらないように日よけ/雨よけの工夫が必要となるので、室内向きと言えるでしょう。

種類については、植物の性質や実のなり方によって、土耕/水耕のどちらに適しているかを考慮する必要があります。水耕は、一般的にハーブのような葉モノやトマトなどの実モノに適していると言われ、逆にニンジンやダイコンのような土中に実がなる野菜は不可能な場合もあります。

室内でおこなう場合は、成長した植物の大きさも計算に入れる必要があり、最盛期のトマトのように1mを超えるような野菜では、支柱や枝の広がりを考えると観葉植物並みのスペースが必要になってしまいます。同時に、大きくなる野菜は、酸素や光/養分も多く要するため、過去に紹介した養液をポンプで循環させる装置やLED照明などの設備が必要となり、屋外での土耕の方が手軽に始めることができます。

このように、栽培方法と植物の種類は表と裏のような関係にあるため、これがベストだ!というセオリーはありません。強いて言えば、育てる植物から栽培方法を決めるべきでしょうが、スペースや手間から逆算し、土耕ならこの植物、水耕ならこの野菜と決めるのも良いでしょう。

発芽から1カ月で30cmを超えたソラマメ。そろそろ屋外に定植しないといけない時期だ

成長が緩やかなニーム(インドセンダン)は、当分は室内で水耕を続ける予定

水耕栽培に必要なグッズ

水耕栽培にはいくつかの方法がありますが、ここでは最もシンプルかつ簡単な方法をご紹介しましょう。必要なグッズは、容器となる鉢やプランター、培地用のハイドロコーン、肥料の3つです。

鉢の場合は側面にスリットがあり、通気性の良いものを選ぶのがポイントです。受け皿に養液を浸して育てる場合、底にしか穴がない鉢では換気ができず、根腐れをおこしてしまうからです。

スリットの無い鉢を使う場合は養液に浸さず、霧吹きなどで与えるのが良いでしょう。水抜き穴に栓ができるタイプのプランターを選べば、受け皿を使わなくても養液を蓄えることが可能ですが、あらかじめ水位を確認し、根が常時浸らないように注意してください。

また、養液は補充し続けていると雑菌や不純物によって腐敗することがあるので、週に一度は全量を交換する必要があります。

ノーブランドのスリット入り6号鉢は128円。直径18センチながら3リットルの大容量

養液を蓄えられるように栓ができるプランター。根腐れを起こすので水位には注意が必要

ハイドロコーンは、20~30cm程度に成長する野菜には中粒が良いでしょう。カイワレなどのスプラウトでは小粒でも構いませんが、保水力の良さが災いして根腐れすることがありますので、水やりは控えめにするのが無難です。

画像のような6号(直径18cm)のスリット鉢に、受け皿とハイドロコーンを買いそろえても1,000円前後が相場で、イニシャルコストが低く抑えられる分、水耕の肝と言える肥料にはウェイトを置きたいものです。

定番は「微粉ハイポネックス」や「ハイポニカ肥料」が定番で、順番に120gで609円と0.5リットルで998円。

筆者は微粉ハイポネックスを1000倍に希釈(1リットルの水に1gを溶かす)して使用しています。毎週1リットルの養液を作る場合、1回に使う肥料は1gなので、これ1本あれば2年以上(=120週間)使える計算になります。

1回5円、1年でも250円程度なので、決して高いランニングコストではありません。ケチらず小まめに交換し、清潔を保つのが良いでしょう。

水耕では定番の微粉ハイポネックス。培地に養分が無いのでしっかりと与えよう

5リットルのハイドロコーン中粒は840円。530円の1.5リットル入りよりはるかにお買い得

栽培が終わった後は、容器やハイドロコーンを洗うだけで連作障害の心配もありません。気になる方は、どちらも熱湯消毒し乾かしてから使えば完ぺきです。

水耕で育苗中のニンニク・ホワイト六片。粘り気のないハイドロコーンだから移植も簡単だ

土耕は大きなプランターで

屋外で土耕なら、少し大きめのプランターがオススメです。土の量が多いほど保水力や肥料の持続性で有利なことと、小さいプランターでは根が張れず大きく育たないからです。

筆者の愛用はアイリスオーヤマのベジタブルプランターシリーズで、中でも「深型650」は38cmの高さのおかげで根菜類も育てられ、大変重宝しています。

ただし幅65cm×奥行き45cmもあるためジャマなのも確かです。置き場所に困るようであれば「ベジタブルポット深型」のような円形が良いでしょう。

置き場所に困らない直径33.8cmのベジタブルポット10号。35.1cmと深いのでニンジンなどにも使えそうだ

培養土も野菜用として準備された混合培養土がオススメで、肥料が含まれているものを選べば、1ヶ月程度は水やりだけでOKです。その後は2~4週に1回程度、汎用の化成肥料や液体肥料を与えればOKです。

12リットルの混合培養土は近所のスーパーで197円也。25リットルものは297円とさらにリーズナブル

有機と化成の混合肥料。追肥の量やタイミングは裏の説明書きを読むべし

土耕の欠点である栽培後の土の手入れは、石灰を混ぜてビニール袋に入れ、日当たりの良い場所に2週間ほど放置し、その後に肥料を追加すれば再び使うことができるようになります。

メンドウだなと思う方は、古新聞に広げて根や異物を除去し、天日で殺菌させるだけでも効果的です。同じ植物を続けて植えると成長が悪くなる「連作障害」も、家庭菜園では2~3年は起きないと言われていますが、気になる方は別の植物とローテーションするか、しばらく土を休ませておきましょう。

そろそろ収穫時期の辛味大根。根菜類も気軽に育てられるのは土耕ならでは

コストを抑えるポイント

水耕も土耕も、続けるうちにあれこれ欲しくなるのが人情で、そのためにもなるべくコストは抑えておきたいものです。何を購入すれば良いか迷うようであればキットがオススメで、ムダな買い物をせずに済みます。

変わり種としては袋で育てるトマトのキットや、水耕の原点?とも言えるお米の栽培キットなどがあり、見た目にも楽しむことができます。

通販では送料がネックになり、少量の買い物ではかえって高額になってしまうことも少なくありません。先に紹介したアイリスオーヤマでは、会員登録(無料)しておくと、送料無料キャンペーンの案内が届くので、筆者はこれを活用しています。

日本農業システムもオススメで、1万円未満は送料が発生しますが、ホームセンターでは入手できないプロ仕様のグッズが手に入るのも魅力です。

これ以外にも種苗メーカーやホームセンターでも無料会員やポイント制を導入しているところが多く、送料が無料になったり会報やカタログが入手できるようになりますので、皆さんもぜひ活用してください。

おまけ

放置し過ぎて巨大化した小松菜。大味な「おひたし」になってしまいました……