残り物の食材で、パパッとカンタンにつくることができるチャーハン。主婦にとっても1人暮らしの人々にとっても、なんともうれしい料理なのだが、"上手くつくる"となると、少々難しいのがこのメニュー。専門店のように仕上げるには、それなりのテクニックが必要なのだ。

そこで、調理指導とレシピ考案をお願いしたのが東京・青山の中華料理店「Essence」のオーナーシェフ・薮崎友宏さん。同店は、化学調味料を使用せず、こだわりの食材でつくる料理の数々で人気を集めている。しかし、担当編集の「家庭でつくりやすいように、缶詰や瓶詰め食材をフル活用してください」というお願いも、嫌な顔ひとつせず快諾していただいた。

教えていただく料理人

「Essence」オーナーシェフ・薮崎友宏さん

横浜中華街の老舗「菜香新館」にて修業を開始。26歳で立川店の料理長に抜擢される。その後、広東省で家庭料理を学び、北京の大学で薬膳の研修を受ける。中国政府認定の国際薬膳調理師の資格も有する。2007年3月に東京・青山「Essence」料理長、2008年に同店オーナーシェフに。同店では薬膳も取り入れ、広東料理をベースにした料理を提供。チャーハンは4種類を用意し、近隣へのデリバリーも行っている。 「Essence」
住所: 東京都港区南青山3-8-2 サンブリッジ青山1F
TEL: 03-6805-3905

まずは、全ての基本である玉子チャーハン

第1回は、基本中の基本である玉子チャーハン。この玉子チャーハン、実は2通りのつくり方があるのをご存知だろうか。料理にちょっと詳しい人なら、わかるはず。玉子を"先混ぜ"にするか、"後混ぜ"にするかだ。

先混ぜ法は、ボウルに溶き卵とごはんを入れて混ぜ合わせ、これを炒めるといったもの。米1粒1粒を卵でコーティングするように混ぜることで、パラリと仕上げることができる。また、仕上がったチャーハンは、全体的に黄金色。それは、前述のように米が玉子の衣をまとっているからだ。

卵かけごはんをつくるような要領で溶き卵とごはんを混ぜ合わせる先混ぜ法。このごはんを炒めていく

後混ぜ法は、フライパンに卵を入れてスクランブルエッグをつくる要領で炒め、あとからごはんを加えるといったもの。おそらく、多くの家庭ではこのつくり方をしているのだろう。

今回は一般的な後混ぜ法を紹介。しかし薮崎さんは、さらに簡単に、そして失敗なく仕上げることができるようこの後混ぜ法を進化させた。「普通にこの方法でチャーハンをつくると、卵が焦げてしまいがち。そこで今回は、炒めた玉子をボウルの中でごはんと混ぜ合わせ、フライパンに戻してから再度炒めていく方法を知っていただきたいです」。後混ぜ法と先混ぜ法の融合ともいえるこの方法、ぜひ皆さんも活用してみてほしい。

炒めた玉子をボウルの中でごはんと混ぜる薮崎さん流の後混ぜ法

具材は玉子以外に夏野菜、そして缶詰のコンビーフを使用。コンビーフ自体にはしっかりめに味が付いているので、チャーハンにその味わいを生かすことが可能。つまり、簡単にチャーハンの味を決めることができるのだ。

缶詰のコンビーフをチャーハンに活用

「野菜たっぷり! コンビーフの玉子チャーハン 玉子後混ぜ版」

材料(1人前)
ごはん 180g / 卵 1個 / 玉ネギ(小) 1/4個 / ズッキーニ 1/3本 / パプリカ 1/4個 / コンビーフ 1/2缶(50g) / レタス 3枚 / トマト 1/4個 / 万能ネギ 適宜 / サラダ油 大さじ1 / 塩 小さじ1/2 / 胡椒 少々

つくり方

1.ごはんは電子レンジで温め、ボウルに入れておく。
2.フライパンを温め、サラダ油をひく。卵を溶き、フライパンに一気に流し入れる。軽くかき混ぜつつまとめ、全体に火が通ったところで、1のボウルに移す。
3.2のフライパンに、みじん切りにした玉ネギ、さいの目切りのズッキーニ、パプリカを加え、炒める。油が足りない場合はさらにプラス。
4.3の工程と同時進行で、2のボウルのごはんと玉子を混ぜ合わせる。しゃもじで切るようにしっかりと混ぜよう。
5.3の野菜類に火が通ったところで、コンビーフを加え、加熱しながらほぐす。コンビーフは脂分が固まっているところがあるので、しっかりと崩して加熱し、にじみ出てきた脂分で全体を炒めていく。
6.4のごはんを5のフライパンに入れ、混ぜ合わせる。ごはんを切るようにして、しっかりと火を通していこう。ごはんをテフロン面に押しつけるようにして、水分をとばすのがコツだ。パラッと仕上がったら、塩、胡椒で味付けする。コンビーフの味が濃いので、塩分は控えめに。
7.皮を湯むきして(面倒な場合はそのままでも可)さいの目切りにしたトマト、適当な大きさに切ったレタスを加え、サッと炒める。レタスに油がまわり、ややしんなりしてつややかになってきたら火を止め、皿に盛り付ける。刻んだ万能ネギを散らして完成。

完成したチャーハンは、コンビーフの旨み、玉ネギの甘み、トマトの酸味が三位一体となり、絶妙なおいしさを演出している。なおレシピは、香港の食堂には必ずあるというポピュラーな「牛肉とレタスとトマトのチャーハン」がベースとのこと。牛挽肉は今回、コンビーフで代用している。

チャーハンをパラリと仕上げるコツについてうかがうと、「ごはんや野菜、コンビーフを炒める際、それぞれ入念に炒めることで水分が飛び、パラパラに仕上がります。火力が弱いコンロの場合、玉子もあまり半熟にせず、水分が減るようにしっかり加熱しておくといいですね」。また、水分の多いレタスやトマトなどの野菜は最後に入れて、水気が出てくる前に火からおろそう。さらに、炊き立てのごはんは水分が多いので、残りごはんを電子レンジで温めたものが最適だという。

テフロンフライパンを使った薮崎さんは、「熱伝導がとてもよいですね」と驚いた様子。熱のまわりがよいので、卓上コンロの火力でも十分パラパラとしたチャーハンになる。逆にいうと焦げやすいので、火加減は中火程度がよいとのお話だった。できれば1人前ずつつくるのが望ましいが、大人数分を一度につくる場合は、深くて大きいフライパンを使うとよいそうだ。

次回は、"先混ぜ法"をご紹介。具材はあえて今回と同じものを使用するので、その違いを比較してみよう。

この連載では、家庭で再現しやすいよう、卓上コンロと一般家庭にあるテフロンフライパンを使って調理していただいています。


撮影: 中村浩二