肩こり、頭痛、むくみ、冷え――多くの現代人が悩まされるこれらの不快な症状は、実は、"血めぐり"と深い関係があります。では"血めぐり"とはなんでしょうか。そして"血めぐり"をケアする、とはどういうことでしょうか。日常生活でできる"血めぐりケア"について、6回にわたり、お話していきます。
PCの前に長時間座っていて、ほっとひと息ついたときに、肩凝りや腰痛が思いのほかひどいことに気付く……。そんなとき、皆さんはどうしていますか? とりあえずマッサージをしたりしてやり過ごすけれど、その症状はしばらくするとまた出てくる。それを繰り返しているのではないでしょうか。
肩凝り、腰痛をはじめ、頭痛、生理痛、目の疲れ、手足の冷えなどのさまざまな不快な症状は、現代人ならほとんどの人が感じているものですが、西洋医学においては"病気"とは診断されないことが多く、これといった治療法がありません。しかし、東洋医学(漢方医学)においては、これは"未病"といって、まだ病気ではないけれど体調が悪い、なにかの病気になる前の状態である、とされ、体の一部を治療するのではなく、心身全体のバランスを整えることで不調を治していくべきだと考えます。そして、心身全体のバランスを整えていくうえで、重要な役割を果たしているのが"血めぐり"なのです。
"血めぐり"……ちょっと耳慣れない言葉かもしれませんが、"血行"、"血液循環"と言えばわかりやすいでしょう。血液は、酸素や栄養分を全身に運び、老廃物・疲労物質を回収してまた心臓に戻っていきます。この生命活動の根幹を成す重要な役割――血液循環と新陳代謝を、ここでは"血めぐり"と呼びます。上に書いたような症状はこの"血めぐり"が悪くなることで引き起こされている、ということをまず知りましょう。
この数十年で日本人をとりまく生活環境はガラリと変わりました。食生活の欧米化は言うまでもなく、PCを使った仕事の増加、運動不足、またエアコンの普及や、季節を問わず冷たい飲食物を摂取したり、露出の多い洋服を着るようになったりと、日常生活のさまざまな習慣が血めぐりを悪化させています。また、精神的ストレスも血めぐりには大敵。ストレスがかかると全身の血めぐりをコントロールしている自律神経のバランスが崩れ、血管が収縮し、その結果、身体の隅々まで十分に血液が供給されず、身体が常に冷えた状態になってしまうのです。
人間の生命活動に関わる"血めぐり"。この血めぐりの大切さを知り、ケアしていくことで、身体全体のバランスを整えていこう!というのがこの連載のテーマです。 といっても、決して難しいことではありません。血めぐりケアの考え方はとてもシンプル。冷えをとり、温めること。そして軽い運動をすること。たったこれだけの心がけで、血めぐりは少しずつアップしていきます。
次回からは、日常生活のなかで簡単にできる"血めぐり"ケアについて、お話していきたいと思います。お楽しみに!
イラスト : 押金美和
渡邉賀子プロフィール
<現職>
血めぐり研究会主任研究会員。麻布ミューズクリニック院長。慶應義塾大学医学部漢方医学講座・非常勤講師。日本東洋医学会・専門医・指導医、医学博士。
<経歴>
久留米大学医学部卒業。熊本大学第三内科入局、北里研究所東京医学総合研究所・研究員を経て、97年、北里研究所にて日本初の「冷え症外来」開設。2003年、慶応義塾大学病院漢方クリニックにて「漢方女性抗加齢外来」を開設。2004年、麻布ミューズクリニック開業。著書『「脱・冷え症」でさびない、むくまない、太らない』(オレンジページ)、『10パーセント脱力生活』(NHK出版)。