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3 受け身・他律な部下は変えられる『プロアクティブ人材』論

「働かないおじさん」が生まれるワケと改善策

Updated JUN. 13, 2025 15:56
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Contents

第2回では、「プロアクティブ人材」について、日本総研が2024年に実施した20,400人の企業勤務者に対するアンケート調査の結果を紹介しました。

日本の企業勤務者のプロアクティブスコアの平均値は2.89と中間の3.00を下回り、日本の企業勤務者全体の傾向として受身・他律的な働き方をしているという結果を確認しました。

今回は、上記のアンケート調査を年代別に分析した結果を紹介し、ビジネスリーダーの皆様に日々のマネジメント業務で意識頂きたいポイントをお伝えします。

中高年層のプロアクティブ度が最も低い

上記のアンケートにおいて、個人単位のプロアクティブスコアの平均値を年齢帯別に集計したものが図1となります。20代から50代前半にかけてスコアが低下していき、50代後半からスコアが増加していく傾向が確認できます。年齢計のプロアクティブスコアの平均値は2.89であるため、45歳~59歳のスコアが全体平均を下回っています。

入社直後には自発的かつ前向きに仕事に取り組んでいた部下が、キャリアを重ね責任が大きくなるにつれて、徐々に受身・他律的になっている、という光景をビジネスリーダーの皆様も一度は目にされたことがあるのではないでしょうか。

上記の通り、プロアクティブスコアは年齢とともに右肩下がりで低下し、日本企業におけるボリュームゾーンである45歳~54歳のプロアクティブスコアが最も低いというのが現状です。

この世代のプロアクティブスコアが低い状態が今後も継続すれば、日本企業全体としての競争力低下につながることは必至ですが、逆にボリュームゾーンであるこの世代のプロアクティブスコアが向上していけば、今まで以上の成果創出が見込めることになります。

  • 【図表1】個人単位のプロアクティブスコアの年齢帯別の分布

なぜ40代後半から50代前半の中堅・プレシニア層のプロアクティブスコアが他の年代に比べて低いのでしょうか。一因としては、まだまだ日本企業には根強く残る年功序列的な人材マネジメントの存在があります。

伝統的な日本企業においては、若手層は横並びの処遇を行うことが多いですが、30代・40代を境に明確な昇格・昇進の差が生まれ、40代後半頃にはキャリアの終点が意識されるようになります。そのような将来的なキャリアへの諦めがプロアクティブ行動を引き下げている背景にあると考えています。

実際に、図表2に記載の役職と年代別のプロアクティブスコアを見ると、40代後半から50代前半の社員でも、役職に就いている社員のプロアクティブスコア(図表2の赤枠部分)は全体平均の2.89を上回り、役職に就いていない同年代の一般社員だけでなく、その他の年代の役職に就いていない一般社員よりもスコアが高くなっています。

40代後半から50代前半の非管理職層のプロアクティブスコアが低いというデータは、年上の部下をマネジメントする立場を経験された方であればイメージしやすいのではないでしょうか。

「組織全体の成果向上を目指して様々な施策を進めようとするが、年上の部下が積極的に活動に参加せず、また年齢の壁もあり、強く指導することも難しい」そのようなマネジメントの難しさを、筆者も複数の管理職の方々から聞いたことがあります。

  • 【図表2】役職・年齢帯別のプロアクティブスコア

部下の行動は働きかけや環境変化によって変えられる

最後に40代後半から50代前半の非管理職層のプロアクティブスコアをどのように引き上げるかについて考えます。

組織内の年上の部下にどのようにプロアクティブになっていただくかという視点で次のデータを見て頂ければと思います。プロアクティブ行動は革新行動、外部ネットワーク行動、組織内ネットワーク行動、キャリア開発行動の4つで構成されますが、図表3の赤枠部分に示す通り、上記の年代は革新行動を除く3つの行動が相対的に低い状態にあります。

  • 図表3 年齢帯別の4つのプロアクティブ行動スコア

将来的なキャリアへの諦めがプロアクティブ行動低下の背景にあるとすると、特に、外部ネットワーク探索行動、キャリア開発行動が上記の年代のプロアクティブスコアを引き上げる鍵になると考えます。

組織内で長年キャリアを積んできた中堅・プレシニア層の社員は、所属組織内でどのように高い収入を得るか、高い役職に就くかという価値観でキャリアを捉える傾向が強い状態にあります。

このような社員に対し、外部ネットワーク探索行動やキャリア開発行動を促すためには、一定の価値観の転換が必要となります。

つまり所属組織外の人と積極的に交流を持ち、仕事の枠にとらわれず、自身の培ってきた能力やスキルをどのように組織全体、ひいては社会に役立てることを重視する価値観への切り替えができれば、上記の年代の社員であっても、自発的かつ自律的に職務に取り組んでいただけるようになると考えられます。

この時必要な考え方の1つに「マインドセット」という概念があります。日本総研が実施した調査によると、管理職が、「部下の行動は働きかけや環境変化によって変えられる」というマインドセットを持つか、「部下の行動は先天的に決まっており変えられない」というマインドセットを持つかで、部下への指導やアドバイスの内容が変わるということが分かっています。

例えば、部署内の年上の部下に対して、「あの人に前向きなアドバイスをしても何も変わらないだろう」、「これまでのやり方へのこだわりが強いから、新しいやり方を強く勧めてもしょうがない」等のマインドセットを管理職が持ってしまうと、年上部下のプロアクティブスコアの低下に拍車がかかることになります。

我々の調査からは「部下の行動は働きかけによって変えられる」という考えを強く持つ管理職は、部下の外部ネットワーク探索行動やキャリア開発行動を高めるために、「周囲の社員や他部門の社員とのネットワーキングの奨励」、「本人のレベル+αのチャレンジ業務の付与」、「周囲の社員と協力・連携させるような機会の付与」といった前向きな施策を積極的に取り入れていることが分かっています。

上記のような具体的な働きかけを40代中盤から50代前半の非管理職層に行って頂くためにも、ビジネスリーダーの皆様自身には、まずは「部下の行動は働きかけによって変えられるというマインドセット」を持っていただくことが必要です。

その上で、日々のコミュニケーションの機会や定期的な1on1面談の場を通じて、「人生100年時代と言われる現在だからこそ、組織内に閉じず広い視点と長い時間軸でキャリアを捉えることの重要性」を継続的にお伝えいただければと思います。

今回は個人単位のプロアクティブ行動に着目しましたが、次回はチーム単位のプロアクティブ行動にも着目し、プロアクティブ人材の育成が企業全体の成果に好影響を与えることをご紹介していきます。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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