お金の多寡が寿命に与える影響とは

お金は世の中の大半の人の関心事である。生きていくためにお金がかかる以上、あるに越したことはないからだ。金銭的な余裕は、知力向上や精神的なゆとりなどにつながる一面があるが、寿命にも影響を及ぼすかもしれない。

海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「所得と寿命の関係」に関するコラムが掲載された。米国の低所得層の平均寿命は、高所得層の平均寿命よりもかなりの開きがあることが最新の研究で明らかになったという。

11月初旬、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン氏による大統領選に沸いた米国では、かねてより経済格差が叫ばれていた。その格差が寿命にまで影響を与えていることが示唆されている。

イーストテネシー州立大学の研究グループがこのほど発表した研究によると、米国では「所得最低の州」に住む男性の平均寿命は69.8歳で、「所得最高の州」に住む男性の平均寿命は79.3歳と、その差が約10年もある事実が判明したとのこと。

研究グループは、米国の3,141ものカウンティー(郡)を所得順に再編し、50の「新しい州」を作成した。再編された50州で最も富裕な州における4人家族の平均所得は8万9,723ドル(約1,005万円: 1ドル112円換算)で、最も貧困な州では2万4,960ドル(約280万円)。4人家族の連邦貧困ラインは2万4,250ドル(約272万円)で、再編後の最低所得の州に住む家族の平均所得は、貧困ラインを少し超えた程度だ。最低所得の州に住む人は全米で最も寿命が短かった。

最も寿命が長かったのは、全米最高所得のカウンティーに住む女性で、平均寿命は83歳。最も所得の低いカウンティーに住む女性の平均寿命は、76歳だった。男性はさらに差が顕著で、所得最高層の男性の平均寿命は79.3歳の一方、最貧困層の男性の平均寿命は9.5歳も短い69.8歳だった。

「米国の貧困状況は深刻で極めて不穏なものだ。米国で最も貧困なカウンティーの平均寿命は、世界の半数以上の国の平均寿命よりも短い。この結果は米国のすべての人にとって極めて深刻な問題だ」との見解を研究グループは示している。州のデータよりもカウンティーのデータを用いることで、米国の貧困状況がよくわかる。

ちなみに新たに再編した50州のうち、「最貧困州」はアラバマやアーカンソー、ジョージア、イリノイ、ケンタッキー、ルイジアナなどの州に属するカウンティーによって、「最裕福州」はカリフォルニアやコロラド、コネチカット、ジョージア、イリノイ、インディアナ、ケンタッキーなどの州に属するカウンティーによって構成されている。

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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。