「ソニーのPlayStation VR(PS VR、図1)は10月13日に発売されるや品切れになってしまったが、これはグローバルなVR機器市場で新たな競争が始まったことを意味する。VR機器の需要は今後2年間高く保持されるだろう」と、市場動向調査企業である台湾TrendForceのウェアラブル機器アナリストであるJason Tsai氏は語る。「VR製品の出荷は需要に追い付かないだろう。主要な部材、特に有機ELパネルが不足するため、メーカーはもっと出荷したくてもそれができそうにない」とするほか、「VR機器のトップ3社(台湾HTC, 米Oculus Rift、ソニー)は、現在、需要に見合った生産能力が確保できていない。間もなくクリスマス商戦がやってくるが、各社ともピークシーズンに備えた在庫を確保できていない」とTsai氏は続ける。
予想したよりはるかに需要が大きいため、各社は有機ELパネルを含む主要部材の買い増しを進めている。しかし、有機ELパネルのスマートフォンへの適用が急増しているため、VR機器向けに有機ELパネルを確保するのは容易ではない。
Googleは最近、「Daydream View」という、同社のスマートフォンと組み合わせて使うVRビューアとコントローラのパッケージの販売を開始した(図2)。このような新しいタイプのハードウェアの登場で、スマートフォンメーカーは、ますます自社製品に有機ELディスプレイを搭載しようとしている。このため、TrendForceは、有機ELディスプレイなどVR向け部材の供給は、今後1~2年以上にわたってタイトな状態が継続すると予想している。
また、すべてのVRゴーグルベンダが供給を増加させているが、その中で、PS VRは、PlayStation 4(PS4)のゲームコンソールと接続する仕組みなので、PS4の好調な売れ行きに乗って(図3)、ソニーは市場のリーダーで居続けるだろうとするほか、11月に販売を開始する予定のPS4の上位機種「PS4 Pro」は、すべての主要なセールスポイント(VR、HDR機能や改良されたハードウェア)を内蔵しているため、ソニーのコンソール販売を推進するだろうとの見方を示す。TrendForceは、PS4の年間総販売台数は、2016年の1840万台から2017年には2120万台に増加すると推測している(図3)。
なお、Tsai氏は「VR機能がPS4の販売を促進するだけではなく、PS4 Proのハードウェアは、PS VRに対する消費者の興味を増すだろうが、PS VRにとって有機ELパネルはじめ部材の入手が最大の問題になるだろう。一方、HTC ViveとOculus Riftは、同様な部材不足の課題を抱えつつ、人気の高いPS VRに対して市場シェアをどうやって確保するか苦しい戦いを強いられるだろう」と今後の動向についてコメントしている。