妊婦は「紅茶キノコ」を飲む前に医師に相談するように

「Kombucha」と聞いてピーンと思い当たる人はいるだろうか。日本で飲まれている昆布茶を思い浮かべる人も多いだろうが、Kombuchaと昆布茶は全くの別物なのだ。

海外のさまざまなニュースを紹介する「LiveScience」にこのほど、「Facts About Kombucha, the Fermented Tea Drink」と題したコラムが掲載されたので紹介しよう。

Kombuchaは日本語で「紅茶キノコ」と表現され、お茶ベースに砂糖、バクテリア、酵母菌を加えた若干酸味のある発酵飲料のことだ。紅茶キノコを紹介した書籍もいくつか日本で販売されている。2000年ほど前に中国で誕生したとされており、健康食品店やホリスティック医療を取り入れている消費者の間で人気が高まっている。

お茶に砂糖や酵母菌などを加えて混ぜて発酵させると、「ビールのようなにおいがしてアップルサイダーのような味がする」とも表現される飲料ができあがる。また、ある人はワインや酢のような味がするとも言っている。そして、この発泡性飲料はキノコが入ってないにも関わらず、「kombucha mushroom tea」(コンブチャ マッシュルーム ティー)と呼ばれることもあるという。

科学的に実証はされていないが、紅茶キノコ愛飲家は「髪の毛の色がよくなる」「髪の毛がふさふさになる」「コレステロールと血圧を下げる」「血液循環を活性化させる」「免疫システムを強化する」などの効用があるとみており、体を解毒してがんさえ防げると主張している。

この主張について、 Villanova College of Nursing's MacDonald Center for Obesity Prevention and Educationのレベッカ・シェンクマン氏は「紅茶キノコはビタミンB、プロバイオティクス、抗酸化物質が豊富」と認める一方で、「紅茶キノコの効用に関する正式な医学的研究はないため、製品の健康強調表示には注意しないといけない」と警鐘を鳴らしている。

実際、紅茶キノコを直接対象とした研究は行われたことはないが、その成分であるプロバイオティクスの研究は行われてきた。プロバイオティクスは消化を助け、過敏性腸症候群にも効能がある可能性をアメリカ国立衛生研究所は指摘している。一方で、人によっては胃のむかつきや感染症、アレルギー反応などを引き起こす場合もあるという。

ペニンシュラ・メディカル・スクールは、紅茶キノコ摂取に健康面での利益があるのかをみるべく、臨床上の証拠を系統的に調査。その結果、「紅茶キノコの効能に関する臨床研究は皆無で、紅茶キノコの安全面に疑問を呈する症例はあった」と結論付けた。安全面に関して言えば、肝臓障害や皮膚炭疽感染などの疑いがあり、死者が出たという記録もあったとのこと。

アメリカ疾病管理予防センターによると、飲み過ぎから起こる潜在的リスクを避けるために、健康な成人は紅茶キノコを一日4オンス程度に制限すべきだという。特に妊婦や母乳による育児をしている女性は、紅茶キノコを飲む前に医師に相談すべきだと覚えておこう。

※写真と本文は関係ありません

記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。