社会人になって会社勤めが長くなると、多くの人は運動をする機会を失ってしまう。その「ツケ」がおなか周りや背中にびっしりとたまってくるわけだが、実は「運動不足」が主要な死因になりかねないかもしれないのだ。
海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「運動不足と中年の死因」に関するコラムが掲載された。最新の研究結果によると、中年の場合、運動不足は高血圧や高コレステロールよりも死につながりやすいという。
有酸素能力のない人は若くして亡くなる傾向があるが、その能力を改善させるために身体的活動を増やし、いすに座っている時間を減らす必要があると考えられている。
「身体的にアクティブだと一生良いことがあるというのは明白だ。身体能力が低いことは、高血圧や高コレステロールよりも死因となるリスクが高い。私たちは喫煙を減らすことに長い時間を費やしてきたが、次の課題は身体活動を持続させ、長時間いすに座るなどの『身体的不活発な時間』を減らすことだ」とスウェーデンのゴーテンバーグ大学のパー・ラデンヴァール医師は言う。
研究は、1963年に50歳のスウェーデン人男性792名を対象として始まった。4年後に運動テストを行い、656名には最大運動テストを行い(残りは健康上の理由で除外)、最大酸素消費量を測定した。最大酸素消費量は有酸素能力の測定であり、値が高いほど健康だと言える。1967年の最初のテスト以来、2012年に100歳になるまで45年間追跡調査が行われた。
最大酸素消費量と死亡率の関連を見るため、参加男性は以下の3つのカテゴリーに分けた。
■カテゴリー1: 毎分2.00リットルの血流量
■カテゴリー2: 毎分2.26リットルの血流量
■カテゴリー3: 毎分2.56リットルの血流量
追跡調査の結果、カテゴリーが1から2へと、2から3へと1つ上がるごとに45年間における死亡リスクが21%低いことが明らかになったとのこと。これらの結果から、低有酸素能力が死亡リスクの上昇に関連していることが示唆された。有酸素能力が死亡リスクに与える影響は、喫煙の次に高かったという。
今回の研究結果だけをみると、「運動をしないで喫煙をしている」という状態は体にかなりのダメージを与えていると考えられる。該当する人は、たばこを吸う本数を減らしたり、運動を始めたりした方がいいかもしれない。
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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。