阪堺電気軌道は30日、上町線住吉~住吉公園間の軌道事業の廃止を発表した。廃止日は2016年1月31日とされ、前日の1月30日が運行最終日となる。同区間については今年8月、国土交通大臣宛に廃止申請書を提出したことが発表されていた。
上町線の終点、住吉公園停留場は南海本線住吉大社駅に隣接しており、上町線は2014年3月のダイヤ変更まで天王寺駅前~住吉公園間の運行だった。現在はほとんどの電車が天王寺駅前~我孫子道・浜寺駅前間の運行となり、住吉公園停留場に乗り入れる電車は平日上下5本・土休日上下4本のみ。いずれも朝7・8時台の運行とされている。
電車が運行されない時間帯の住吉公園停留場は閑散としており、ホームに入れないようにロープで仕切られ、時刻表には「上記時間以外、住吉鳥居前からご乗車願います」と案内されてあった。住吉鳥居前停留場は住吉公園停留場から東へ70mしか離れておらず、日中時間帯にも上町線天王寺駅前方面へ1時間あたり10本、阪堺線新今宮駅前・恵美須町方面へ1時間あたり3本の電車が設定されるなど、利便性も高い。
上町線住吉~住吉公園間の線路は敷設から60年近く経過し、住吉交差の併用軌道や住吉公園停留場内のポイント部は老朽化が進行。安全運行を継続するには抜本的改修が不可欠だが、数億円規模の費用が必要で経営に大きな影響を及ぼすことから、同区間の軌道事業を廃止せざるをえないとの決断に至ったという。阪堺電気軌道は同区間の廃止にともなうダイヤ変更を実施する予定で、詳細は後日改めて発表予定としている。
住吉公園・住吉鳥居前停留場の1駅先、上町線・阪堺線が接続する住吉停留場は、全国的にも珍しい「ダイヤモンドクロス」と呼ばれる平面交差で知られた。阪堺電気軌道によれば、住吉交差部も老朽化が著しいことから、上町線住吉~住吉公園間の廃止後に軌道を改修し、阪堺線の電車運行と周辺の道路交通の安全性向上を図るとのことだった。