Googleは9月3日、デジタルコンテンツストアGoogle Playが提供している定額制の音楽配信サービス「Google Play Music」を日本でも開始した。Android OSやiOSを搭載したスマートフォン、タブレット、およびPCブラウザから利用できる。本稿では同日に行われた記者発表会の内容をレポートする。

Google Play Musicは国内外の音楽レーベルと提携しており、楽曲ラインナップは3,500万曲以上。月額980円で聴き放題となるサブスクリプションサービスや、曲やアルバム単位で音楽を購入できるストアのほか、自分が所有している曲を5万曲までクラウドに保存できる無料のロッカー型サービスを提供する。サブスクリプションサービスは登録から30日間は無料となるほか、2015年10月18日までに申し込むと限定価格の月額780円が適用される。

日本の音楽デジタル化を進めるサービス

Google Play Musicの発表会が開催された

Google Play Musicはすでにグローバル展開しており、北米・南米・欧州のほぼすべてをカバーするまでに至っている。日本は60カ国目のマーケットだ。同サービスを日本で公開した理由について、Google Play 音楽パートナーシップ担当ディレクターのサミ・ヴァルコネン氏は、「音楽市場の成長」を挙げる。ヴァルコネン氏によると、Google Play Musicのグローバルにおける登録者数はここ一年で倍増したものの、有料のサブスクリプションサービスを利用しているユーザーは2,800万人に留まっており、さらなる成長を遂げる可能性があるとしている。

Google Play 音楽パートナーシップ担当ディレクターのサミ・ヴァルコネン氏

また、日本のユーザーはインターネットに接続するデバイスを一人あたり平均2.4台所有しており(Consumer Barometer2015レポートより)、その半分以上をスマートフォンが占めている。世界的に見てもモバイルファーストとマルチデバイスが浸透している国であり、ヴァルコネン氏によれば「モバイル検索がデスクトップ検索を上回っている世界10カ国のうちの一つ」なのだという。

同時に、日本は音楽市場においても世界2位の規模を持つ巨大なマーケットだ。一方で音楽マーケットにおけるデジタル音源利用の割合は、17%と非常に少ないのが実情。ちなみに米国は71%、英国は45%と音楽のデジタル化が進んでいる。ヴァルコネン氏は、日本で公開したGoogle Play Musicで「物理的な音楽(CD)からデジタルへの成長軌道を進めていけるよう手伝いたい」と述べる。

「サブスクリプション」機能

サブスクリプションモデルの音楽配信サービスには、先行する競合も多い。それらとの差別化を図るためにGoogleが用意したのが、「サブスクリプション」「ストア」「ロッカー」という3つの機能である。

日本は音楽マーケットにおけるデジタルの割合が非常に低い

「サブスクリプション」「ストア」「ロッカー」の3機能で差別化を図る

ここからは、記者発表会に登壇したGoogle Playミュージックパートナーシップマネージャー 鬼頭氏によるデモンストレーションをもとに、Google Play Musicの機能を紹介していく。

Google Playミュージックパートナーシップマネージャー・鬼頭氏

まずは「サブスクリプション」サービス。サブスクリプションは定期購読という意味で、Google Play Musicでは3,500万曲が聴き放題となる。

最大の特徴は、Google独自のアルゴリズムによる強力なレコメンデーション(推薦)機能。視聴履歴などをもとにユーザーの好みを学習し、豊富なラインナップの中からおすすめの楽曲を紹介してくれる。たとえば「いつも聞いている◯◯というアーティストに近いアーティストの楽曲」、「いつも聞いている◯◯という楽曲に似た雰囲気の楽曲」といった具合だ。また、レコメンド時に、どういう理由でその楽曲をピックアップしたのかも表示される。

シーンに合わせたプレイリストも提案。「木曜日の朝にオススメの音楽」「勝組モードで目標達成」「ワンランク上の家事タイム」「心静かにひと呼吸」などといったプレイリストを作成・提案し、気分に合ったプレイリストを選ぶといった楽しみ方ができる。

豊富なラインナップと独自のアルゴリズムによるレコメンデーションが最大の特徴

利用者の視聴履歴などをもとにおすすめの楽曲を選び出してくれる

また、Google Play Music全体の楽曲ランキングである「トップチャート」で人気の楽曲を聴くことができたり、リリースされたばかりの曲をチェックできる「新作」、ジャンル別に細かく選曲をカスタマイズできる機能なども用意されている。

「ストア」機能

Google Play Musicで聴けるのは、Googleが用意した楽曲ラインナップだけではない。同サービスには「ストア」機能も含まれており、曲・アルバム単位で楽曲の購入が可能。購入した楽曲は、サブスクリプションサービスの楽曲とシームレスに扱うことができる。購入と視聴は、サブスクリプションサービス非加入のユーザーも利用可能だ。

「ロッカー」機能

そして、競合サービスとの大きな差別化になりそうな機能がロッカー。これは自分が所持している楽曲を最大5万曲までクラウドに保存できるサービスで、CDやiTunesなどを通じて手に入れた楽曲も保存可能だ。楽曲のアップロードに専用のアプリは必要なく、ブラウザに音楽ファイルをドラッグするだけ。保存した楽曲もサブスクリプションサービスの中に含めることができるため、サブスクリプションサービスを利用しつつ、まだ配信されていない楽曲は手持ちの音源で補完するといった使い方が可能になる。

PCブラウザからもスマートフォンと同一の機能を利用可能。履歴などはもちろん同期される

サブスクリプションサービスを利用していなくても楽曲を購入できる

オフライン再生にも対応する。楽曲をあらかじめダウンロードしておくことで、インターネットにつながらないところでも再生が可能。オフライン再生機能は、サブスクリプションサービス、ロッカーの両方で利用できる。

また、Googleならでは強力な検索機能を搭載。検索窓に「じゅでぃまり」と入力するだけで「JUDY AND MARY」がヒットするなど、曖昧な検索ワードにも対応している。

国内音楽レーベルが多数協力

Google Play Musicが日本でサービスを展開するためには、当然ながら国内のレコード会社の協力が不可欠だ。発表会にはサービスへの協力を表明している3レーベルの代表者が登壇し、挨拶を行った。

左からソニー・ミュージックエンタテインメントの今野氏、エイベックス・ミュージック・クリエイティヴの佐藤氏、ユニバーサル ミュージックの島田氏

ソニー・ミュージックエンタテインメントの今野氏は「音楽産業は時代のテクノロジーと結びついている。今年はストリーミング元年で、Google Play Musicは真打ち登場という感じ。期待している」とコメント。

エイベックス・ミュージック・クリエイティヴの佐藤氏は「日本には無料試聴のみを利用するユーザー層が34.4%あり、サブスクリプションモデルはこういった人たちにいかにお金を使ってもらえるが成否を握る。Googleのような影響力のあるプレーヤーが市場参入することで、サブスクリプション・モデルが定着する原動力になることを期待する」とコメント。

最後にユニバーサル ミュージックの島田氏は「日本はモバイルの最先端を行く国で、デジタルには成長の余力が残っている。このタイミングでサブスクリプションモデルが立ち上がることで、エンタテインメント市場全体が盛り上がってくるのでは。タッグを組んで音楽市場を盛り上げていきたい」とコメントした。