三池崇史監督がメガホンを取り、俳優・市原隼人が主演を務める映画『極道大戦争』(6月20日公開)の制作秘話が、このほど明らかになった。作品誕生のきっかけは"居酒屋"。そして、撮影場所は三池監督にとって"運命"とも言える日活撮影所で行われた。

映画『極道大戦争』

本作は、"ヤクザヴァンパイア"に噛みつかれた人間が次々とヤクザ化するという奇想天外なストーリー。ヤクザや堅気のほか、謎の刺客やKAERU君、河童などさまざまなキャラクターが登場し、「アクション映画」「ゾンビ映画」という枠を超えた規格外の作品が完成した。三池監督が「一度原点に戻りたい」という思いで臨み、市原をはじめ、成海璃子、リリー・フランキー、高島礼子、青柳翔太、ピエール瀧といった個性豊かな俳優陣が集結した。

構想のきっかけとなったのは2013年末、居酒屋での雑談だった。出席者は三池監督をはじめ、千葉善紀プロデューサー、助監督で『猫侍』(14年)などを手掛けた山口義高氏ら。そこで、三池監督のスケジュールが空いていることが判明し、「何かやろう」という流れに。かつて三池監督がVシネマで撮っていた『極道戦国志 不動』(96年)や『FULL METAL 極道』(97年)のような「"異色ヤクザ映画"を作ろう!」と盛り上がった。

そこから、ヴァンパイアとヤクザを組み合わせた「噛まれたらヤクザ」という設定が生まれ、山口氏が脚本担当に指名される。山口氏はその後も次々と出るアイデアをナプキンに書き留めていたものの、内心では「この場限りの話だろう」。ところが翌日、千葉プロデューサーから正式に脚本執筆の依頼があり、そこから急ピッチで制作が進んだ。この急展開に三池監督も「本当にやるんだ(笑)」と驚く一方、「こんな作品を映画にできるのは日活しかいない」と確信したという。

撮影が行われたのは、三池監督がテレビドラマの助監督時代の大半を過ごし、「一番いろんなことを学んだ場所」と語る日活撮影所。その一角の取り壊しが決まったことで「何をしても構わない」という好条件がもたらされ、"日本海に面した寂れた町の商店街"のイメージで全長100メートルのオープンセットを組むことができた。

「無くなるってことはまた何かがはじまるってことなので、寂しさよりも、そこに存在してくれたことへの感謝の方が大きいですね」と語る三池監督。劇中の不動産屋で、日活撮影所衣裳部に駐在する第一衣装の元社長を特別出演させるなど、本作の演出には三池監督の「最後にここで撮影ができたことに運命を感じます」という感謝の思いが数多く詰まっている。

(C)2015「極道大戦争」製作委員会