毎年6月11日頃を入梅 (にゅうばい)と言います。意味はもちろん「梅雨 (つゆ)」。どちらかというと、ジメジメしてカビ対策が必要など、ネガティブな扱いをされがちですが、昔の人は違った考えを持っていたようです。
入梅は雑節のひとつです。正確な梅雨入りは気象庁から発表されますが、暦の上では今日あたりから梅雨入り。雑節では、二十四節気の芒種 (ぼうしゅ)から5日後の今日から約30日間を「梅雨」としています。
この時期の雨は農作物にとって大切な恵みですし、ちょうど田植えの時期でもありますから、雨の情報は農業に従事する人にとって必要不可欠です。そのため、江戸時代に入梅が設けられたと言われています。現在のように気象学が発達していなかった時代の知恵ですね。
ちなみに、「入梅」というネーミングは、「梅が熟す頃」という意味でつけられたとする説と、カビが生えやすい「黴雨 (ばいう)」が由来とする説があります。
<参考文献>
三省堂年中行事辞典【改訂版】 (三省堂) / 入門 日本の旧暦と七十二候 (洋泉社) / 原色シグマ新国語便覧 増補三訂版 (文英堂) / 暮らしのしきたり十二か月 うつくしい日本の歳時と年中行事 (神宮館) / 日本の風俗の謎』(樋口清之著、大和書房) / 日本人のならわしと暮らし暦12か月 (瀧本マリ子と日本人の暮らし研究会著、海龍社)
執筆:野村佳代
株式会社アスラン編集スタジオ 代表取締役。編集・ライター。一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。Webサイト「ビジネス文章力研究所」を運営している。