エミレーツ航空(本社: アラブ首長国連邦・ドバイ)は4月23日、英ロールス・ロイスとトレント900エンジンおよび長期保守・管理サービス「トータルケア(TotalCare)」の契約を締結したことを発表した。今回の契約はエミレーツが展開する英国および欧州に対する投資戦略の一環として締結したもので、契約金額はロールス・ロイスにとって過去最大規模となる92億ドル(87億ユーロ)となる。

左から、ロールス・ロイス最高経営責任者(CEO) ジョン・リシュトン氏 、エミレーツ社長 ティム・クラーク氏

契約したエンジンは、エミレーツが2013年のドバイエアショーで発注し、2016年に就航予定のエアバスA380型機50機に搭載される。今回の契約は、英国企業が受注した輸出案件としても史上最大級の取引となる。

契約は、英国西部ブリストルからスコットランドにかけてロールス・ロイスが構築しているサプライチェーン全体の雇用安定にもつながる。2013年の英国とアラブ首長国連邦間の貿易金額は推定134億ドル(127億ユーロ)だったが、今回の契約は両国の関係を一層強化するものとなるという。

エミレーツ社長のティム・クラーク氏は、「ロールス・ロイスはエミレーツにとって欠かせないパートナーです。トレント900の経済性と性能の継続的な向上に真摯(しんし)に取り組む同社の姿勢には、いつも大きな刺激を受けています。その性能向上の成果が、今回のエアバスA380型機50機の搭載エンジン選定における決定的要因となりました」とコメントしている。

欧州指折りの経済コンサルタント会社であるフロンティア・エコノミクスの調査によると、2013~2014年のエミレーツによるエアバスA380型機の購入は、英国で7,000の雇用を創出し、GDP換算で6億3,000万ドル(5億9,500万ユーロ)に相当するという。EU全体では、エミレーツによるA380機140機の発注が4万1,000の雇用に貢献したと試算しており、これはGDP換算で36億ドル(34億ユーロ)に相当する。

エミレーツはエアバスA380型機を最も多く購入している航空会社で、同型機はエミレーツの成長戦略の中核を担っている。これまで発注した140機のうち、現在60機が運航中で80機が受領待ちとなっている。2008年の導入以来、エミレーツのエアバスA380型機を利用した乗客は3,600万人を超えている。

エミレーツは現在、英国からドバイに1日16便を運航しており、そのうちロンドン・ヒースロー空港発の5便、ロンドン・ガトウィック空港発の2便、そしてマンチェスター発の2便の計9便が、エアバスA380型機によるフライトとなっている。

ロールス・ロイスのジョン・リシュトン最高経営責任者(CEO)は、「この30年間のエミレーツの躍進には、目を見張るものがあります。弊社は1996年からエミレーツにエンジンを供給しておりますが、この間、同社の成功に微力ながらでも貢献でき大変光栄に感じております。今回も弊社の技術を信頼いただき、このような過去最大規模の契約を締結できたことを誠にうれしく思います」とコメントしている。

エアバスのファブリス・ブレジエ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「今年はエアバスA380型機の初就航から10周年を迎えますが、この間、同型機をエミレーツの成長戦略の中核機材としてご使用いただいたことに深く感謝申し上げます。弊社は、すでに定評のあるエアバスA380型機の経済性をさらに向上させる革新的ソリューションの開発に取り組んでおりますが、同型機は航空輸送量の増加を実現する最善のソリューションとして、これからもますます利用されていくものと確信しています」とコメントしている。