大塚製薬はこのほど、「『エクオール』産生能力の実態調査」の結果を発表した。同調査は、東北大学が仙台市宮城野区鶴ヶ谷地区の70歳以上の一般住民を対象として実施。2003年6月30日時点で要介護認定のない590名を7年間追跡し、2009年6月30日時点で要介護認定を受けずに生存していた人を「要介護なし生存群」、要介護認定を受けた人および死亡した人を「要介護・死亡群」とし、342名分の調査時点での凍結血清を用いて比較した。
「エクオール」とは、女性ホルモン「エストロゲン」の働きを補い大豆イソフラボンの効果を最大限に発揮する食品成分で、大豆イソフラボンに含まれる成分「ダイゼイン」と乳酸菌によって産生されるという。この乳酸菌は、腸内環境が整っていないと存在せず、大豆イソフラボンを摂取しても「エクオール」が産生されないことが判明したとのこと。そして「エクオール」が産生できない人は、女性ホルモンが減少することによって起こる更年期障害や骨粗しょう症、メタボリスクなどさまざまな症状が悪化することがわかっているという。
調査の結果、ベースラインの「エクオール」の値が高い者の中で7年後も健康な人は32%、要介護者および死亡者は21%と差が出た。「エクオール」非産生者における要介護認定・死亡率は52%で、「エクオール」の高値群の37%と比較しても高く、「エクオール」非産生者のリスクが1.4倍高い可能性がうかがえた。一方で「エクオール」以外のイソフラボンに含まれるダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインについては健康群と要介護・死亡群で統計学的な差は観察されなかった。
「地域別の『エクオール』産生者比率」 |
「大豆摂取頻度と『エクオール』産生能」 |
これまでに、「エクオール」の産生能には大豆摂取頻度が関連していることが明らかになっている(ヘルスケアシステムズが2011年6月~2013年12月まで全国2,094人の13~89歳の男女に実施した調査)。今回調査した仙台市鶴ヶ谷地区では、342名のうち181名が「エクオール」産生者で、産生者の割合が53%弱を占め、東北地方の平均値37%を上回った。このことから、納豆消費量が全国3位、豆腐消費量が7位の仙台市(農水省・2013年度)における大豆製品の摂取量の多さが、要介護のリスクを下げていることが示唆されるという。
調査結果について東北大学の寳澤篤教授は、「今回の検討からだけでは『エクオール』そのものに要介護・死亡リスクを低くする効果があるのか、それとも『エクオール』を産生できる能力のある方が健康で長生きなのかを結論付けることはできません。しかしながら『エクオール』濃度の高い方の要介護・死亡リスクは結果として低く、予防的効果があるのではないかと期待しています」とコメントしている。