なぜかイライラして、人に当たって自己嫌悪……

「つまらないことで彼を怒鳴り散らしてしまった」「自分は周囲の人を傷つけてばかり………」「いったんスイッチが入ると、感情をコントロールすることができない」。PMSを経験した女性には、こんな悩みを抱えている人も少なくない。

一方、パートナーや家族、会社の同僚は、女性の態度の変化にとまどい、困り果ててしまう。症状がひどい人の中には、抑えられない感情で職場をやめざる負えなかったり、離婚になってしまうケースもある。PMSを正しく理解しておくと、周囲とのトラブルやケンカを避けられるかもしれない。

また、男性も「職場で突然怒り出して困った」「何を言っても妻の機嫌が悪くてどう対処していいか分からない」という悩みを、PMSの仕組みを知ることで解消できるかもしれない。

悪女になるのが生理前だけならPMS

排卵から生理までの間、精神的に不安定な症状や身体の不調が現れる場合をPMS(月経前症候群)という。年齢層は10代から起きる人もいるが、20~30代で悩みを訴える人が多い。その症状には個人差があり、軽いものから重いものまで様々だ。生理が始まると症状が軽くなる、又は解消する。

女性も男性も知っておきたい月経前によく起こる不快な症状
身体の症状:下腹部痛/腹痛/腰痛/肩こり/乳房の張り・痛み/むくみ/肌荒れ・ニキビ/便秘/不眠/疲労感/発熱/冷え性の悪化 など

心の症状:イライラする/気分が落ち込む/集中力低下/過食/仕事がはかどらない/つまらないミスをしてしまう など

PMSは「おブスホルモン」のせい!?

PMSの原因は実はまだ、はっきりとは解明されていない。ただPMSは、排卵が終わると分泌量が上昇する女性ホルモンのひとつ「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が関与しているという説がある。

本来は妊娠を継続させるために働くホルモンで、体温を上昇させたり、水分をため込む働きを持っている。そのため、ほてりやむくみなどが現れやすくなり、ちまたでは「おブスホルモン」なんて悪名がついていたりする。しかし、妊娠・出産には欠かせないホルモンなので、なければいいというわけではない。

いずれにしても、「妊娠・出産回数が少ない現代女性は、毎月ごとにホルモン変動の波にさらされている」というのは事実で、それがPMSの発症に影響していることは間違いないようだ。

1カ月の女性ホルモンと体温の変化

PMSと更年期障害の違いって?

PMSの症状は、更年期障害に現れる症状とほぼ同じ。「まだ30代なのにもう更年期?」と不安に思う女性もいるようだが、「プレ更年期」や「若年性更年期」といった言葉は医学用語ではないので、誤った情報に惑わされないでいただきたい。PMSを更年期と間違えないように、ここで違いをおさらいしておこう。

更年期の症状は女性ホルモンが急激に減少することで起こる。更年期に対して、PMSは20~30代の女性に多く見られ、生理は順調、卵巣機能も正常な人に起こる。むしろ、ホルモン分泌が活発で問題が生じていると言ってもいいかもしれない。40代は更年期の入り口世代なので、PMSか更年期障害か見極めが難しいことがあるので、婦人科でホルモンチェックをしてもらうといいだろう。

生理がある女性であれば、誰もがかかる可能性があるPMS。症状をできるだけ小さく抑えるために、4つのことに注意してみよう。上から順番に実践してみるのがオススメだ。それとは別にひとつ、男性ができる対策もある。男女ともにPMSと上手に付き合うことで、職場も恋愛も家庭も、うまく進めていただきたい。

イライラがいつ現れるか&その時の症状をチェック!
まずは自分がPMSかどうか、生理周期を入力できるアプリなどを活用して、周期とイライラが現れるのが“いつ”なのかを探ってみよう。更に基礎体温をつけると、PMSの時期を予測できる。面倒かもしれないが、最近では基礎体温とアプリを連動させているサービスもあるので、そういうものを利用してみるといいだろう。

PMSの時期が分かったら仕事や用事はセーブして
PMSは、環境の変化やストレスで悪化しやすいことが分かっている。もともとベースに大きなストレスを抱えていると、症状が激しく出てしまうケースが多いようだ。

今は、女性もフルタイムでハードワークをこなす時代。「生理周期なんて気にしていられない」というのが本音かもしれないが、せめてPMSが出やすい時期は仕事をつめすぎないよう、ペースダウンをしよう。ゆったり入浴する、睡眠をたっぷり取るなど、自分なりのストレス解消法を見つけて心や身体への負担を減らすようにしたい。

自分で判断できない時は、まず婦人科を受診
PMSで悩んでいる人の多くは、抑えられない感情でキレてしまう自分を「自分の性格が悪いせい」「心の病気」などと感じていることもある。なぜこの症状になっているか分からないから、よりストレスに思うようだ。婦人科で「PMSですね」と診断が出ることで、気分が晴れる人も少なくない。気分の不調だけで病院に行くことを迷う人も多いが、PMSは自己判断が難しいので、積極的に婦人科へ受診してみよう。

低用量ピルor漢方薬で改善!
妊娠の予定がないなら、低用量ピルを飲むのも一案。本来は避妊薬ですが、飲んでいると卵巣ホルモンの変動を抑えることができるため、イライラを始め、PMSの様々な不調が改善されると考えられている。欧米などでは、たくさんの女性が低用量ピルを活用している。日本ではまだピルに対して抵抗がある人が多いようだが、あまり深刻にならないでいただきたい。生活の質(QOL)をよくするために、ピルを活用するのは有効だ。まずは、婦人科の医師などに症状を話して、相談してみるといいだろう。 

ピルは躊躇(ちゅうちょ)してしまうという人は、漢方薬の処方も検討したい。多彩な症状が現れるPMSのような症状には、実は漢方薬が向いているといわれている。産婦人科でも処方してくれるところが多い。

ピルを服用した時のホルモンの流れ

男性必読! PMSを察知したら、一番は「放っておくべき」
毎月同じサイクルで「妻がキレる」「同僚の女性がコントロールできなくなる」ようなら、PMSの可能性が高そうだ。まずは、ホルモンによる反応だと理解しよう。そして、対処はわざとらしくなく「放っておくこと」。心配して「大丈夫?」とか「つらかったら言ってね」などと思いやりのある言葉をかけても、この時期は女性をイラつかてしまうだけ。イライラの原因を増やさないように、少し遠めでから見守りながら「放っておく」が正解だ。

PMSが明けて明るさを取り戻したら、是非優しさを。きっとあなたの株もきっと上がるはず!

からだエイジング