安倍晋三首相は15日、同日召集された第185回国会(臨時会)で所信表明演説を行った。安倍首相は、「『三本の矢』は、世の中の空気を一変させた」と自負しながらも、「景気回復の実感は、いまだ全国津々浦々まで届いてはいない」との認識を表明。「デフレからの脱却は、いまだ道半ば」とした上で、「この道を、迷わずに、進むしかない」と国民に呼びかけた。福島第一原発の汚染水問題に関しては、「東京電力任せにすることなく、国が前面に立って、責任を果たしていく」との決意を述べた。

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被災地の復興に関しては、「今後、市町村ごとの『住まいの復興工程表』を着実に実行する」「除染やインフラ復旧を加速する」と表明。福島第一原発の汚染水の問題では、「漁業者が、事実と異なる風評に悩んでいる現実がある。しかし、食品や水への影響は、基準値を大幅に下回っている。これが、事実」としながら、「東京電力任せにすることなく、国が前面に立って、責任を果たしていく」とした。

安倍政権の成否を賭けた成長戦略の実行に関しては、「長引くデフレの中で、萎縮した。この呪縛から日本を解き放ち、再び、起業・創業の精神に満ち溢(あふ)れた国を取り戻す」と述べた。

具体的には、「果敢にチャレンジする企業を、安倍内閣は応援する」とし、「新たに『企業実証特例制度』を創設する」と表明。「あらゆる分野において、フロンティアに挑む企業には、新たな規制緩和により、チャンスを広げる」とした。

さらに、事業再編を進め新陳代謝を促し、新たなベンチャーの起業を応援し、研究開発を促進し、設備投資を後押しして生産性を向上させるために、「今後三年間を『集中投資促進期間』と位置付け、税制・予算・金融・規制制度改革といったあらゆる施策を総動員していく」と述べた。

また、「電力システム改革を断行する」とし、「ベンチャー意欲の高い皆さんに、自由なエネルギー市場に参入してほしい」と呼びかけ。「難病から回復して再び総理大臣となった私にとって、難病対策はライフワークとも呼ぶべき仕事」と自らの経験を語った上で、「患者に希望をもたらす再生医療について、その実用化を更に加速する。民間の力を十二分に活用できるよう、再生医療に関する制度を見直す」と表明した。

TPP交渉に関しては、「年内妥結に向けて、攻めるべきは攻め、守るべきは守り、アジア・太平洋の新たな経済秩序づくりに貢献していく」。

公務員制度改革については、「内閣人事局の設置を始め、国家公務員制度改革を推進していく」とあらためて意欲を語った。