「子供たちに"この世は生きるに値する"と伝えることが、この仕事の根幹になければならない」と語った宮崎駿監督

スタジオジブリの宮崎駿監督が6日、都内で引退会見を行い「僕は何度も辞めると言ってきましたが、今回は本気です」と、引退の意思を改めて表明した。

宮崎監督はこれまでに1979年の『ルパン三世 カリオストロの城』から最新作の『風立ちぬ』まで、計11作品の長編アニメーションを手がけてきたが、この日の引退会見では『風立ちぬ』に加え、『風の谷のナウシカ』(1984年)や『ハウルの動く城』(2004年)といった過去の作品についても言及している。

まず、ファンの間では続編の声も多い『風の谷のナウシカ』は、記者から続編について質問が飛ぶと「ありません」と一言。スタジオジブリ立ち上げ当初を「ジブリを作った頃、日本は浮かれ騒いでいる時代だった。経済大国になり"ジャパン イズ ナンバーワン"なんて言われていたけど、僕は頭にきていました。頭にきていなければ『ナウシカ』なんかはつくらない」と振り返り、『天空の城ラピュタ』(1986年)や『となりのトトロ』(1988年)なども含めて「経済は賑やかなんだけど、では心の方はどうなんだ、という想いで作った」と明かしていた。

「最も思い入れのある作品は?」という質問には、『ハウルの動く城』を挙げて「一番自分の中にトゲのように残っている。ゲームの世界なんです。それをゲームではなく、ドラマにしようとして本当に格闘した。スタートが間違ってたのかもしれないな」とはにかみながら、「基本的に子供たちに"この世は生きるに値する"と伝えることが、この仕事の根幹になければならないと思っています。それは今も変わっていません」と、これまでの作品に込めた共通のメッセージについて説明した。

『風立ちぬ』メインビジュアル

そして、第70回「ヴェネチア国際映画祭」コンペティション部門への出品からイタリアでも大絶賛、アニメーションとしては史上初となる「金獅子賞」への期待も高まっている最新作『風立ちぬ』。本作については「映画を見ていただければわかると思っている。日本が軍国主義に向かっていく時代がモチーフで、家族、スタッフからも疑問は出ていました。それに答える形で作った作品」と述懐していた。

また、『風立ちぬ』について語る中で宮崎監督は、「監督になる前にアニメーションというものは、世界の秘密をのぞき見ること、風や人の動き、表情やまなざし、体の筋肉の動きなどに世界の秘密が隠されている、と思える仕事だとわかった。それがわかった途端に、自分の仕事が奥深く、やるに値する仕事だと思えました」と話している。

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