『風立ちぬ』を最後に引退を発表した宮崎駿監督

第70回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品されているスタジオジブリ最新作で、宮崎駿監督によるアニメーション映画『風立ちぬ』の同映画祭における公式会見が1日(現地時間)、イタリアPalazzo del Casinòで行われ、その中で本作をもって宮崎監督が引退することが明らかになった。

7月20日の公開から観客動員数640万人、興行収入80億円を突破し、大ヒットを記録している『風立ちぬ』だが、記者席に約270席が用意されたというこの日の会見には、各国のジャーナリストが詰めかけ大盛況に。会見には、本作のヒロイン・里見菜穂子を演じた女優の瀧本美織、スタジオジブリ代表取締役社長の星野康二氏が登壇し、星野氏より「リドはとても好きなところで、今回ご招待いただいたのに(行けなくて)残念です。みなさんにくれぐれもよろしく」という宮崎監督のメッセージが紹介された。

そして会見の最後に、星野氏は「宮崎駿はリド島がとても好きです。世界に大変友人の多い宮崎駿に関しての発表をこの場でさせていただきます。『風立ちぬ』を最後に、宮崎駿監督は引退することを決めました。来週、宮崎駿本人による記者会見を東京で開きます」と宮崎監督の引退を発表。引退の理由、経緯などについては明かされず、9月6日に都内で行われる記者会見に宮崎監督本人が出席し、そこで説明するという。

公式会見に出席した瀧本美織(左)とスタジオジブリ代表取締役社長・星野康二氏

『風立ちぬ』について星野氏は、宮崎監督が若い頃から本作の主人公のモチーフとなった「堀越二郎」を研究しており、長い間温めていたテーマのひとつだったことを明かしている。しかし、宮崎監督が「アニメーションは子供も楽しめるもの」と考えていることから、本作のアニメ化の決断自体に時間がかかったという。そうした中で制作に踏み切り、30年40年という長い時間を描くこと、ノンフィクションとして描くのではなく、一人の若者に光を当てて描くこと、という2つの大きな挑戦を内包した作品になったと星野氏は説明した。

そうして完成した本作のターゲットについて星野氏は「宮崎の場合は目の前にいる人全員だということは間違いない」と語る。しかし、2011年に東日本大震災が起こり「景気も悪く、過去の事を語るというよりは、その映画の中でどう現代と向き合っていけばいいか? 本当のターゲットというのであれば若い人に向けた作品」と震災の影響が少なからずあったことも説明。また星野氏によれば「創造的人生の持ち時間は10年だ」という劇中の台詞について宮崎監督は「ピークは10年間に違いない。だから自分の場合、そのピークの10年間はずいぶん前に終わったんだ」と語り、「ハハハ」と笑っていたという。