厚生労働省はこのほど、2012年度の個別労働紛争解決制度施行状況を発表した。それによると、2012年度に労働局の「個別労働紛争解決制度」に寄せられた相談内容のうち、パワハラに当たる「いじめ・嫌がらせ」が5万1,670件となり、比較可能な2002年以降初めて首位になったことがわかった。

2012年度の総合労働相談件数は106万7,210件で、前年度より3.8%減少したものの、5年連続で100万件を上回った。このうち、民事上の個別労働紛争相談件数は同0.6%減の25万4,719件となった。内訳は、「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」が同12.5%増の5万1,670件で最も多く、10年連続の増加。以下、前年までトップだった「解雇」が同10.9%減の5万1,515件、「労働条件の引下げ」が同7.9%減の3万3,955件、「退職勧奨」が同3.7%減の2万5,838件と続いた。

最近3カ年度の主な紛争の動向(民事上の個別労働紛争に係る相談件数)(出典:厚生労働省Webサイト)

同省によると、近年は「解雇」に関する件数は減少傾向にある一方、パワハラは増加し続けているという。

相談者の内訳については、労働者(求職者を含む)が20万4,005件(全体の80.1%)と大半を占め、事業主からの相談は3万612件(12.0%)となった。

紛争の当事者である労働者の就労形態を見ると、「正社員」が10万1,472件(全体の39.8%)で最多。次いで、「パート・アルバイト」が4万2,309件(16.6%)、「期間契約社員」が2万7,094件(10.6%)、「派遣労働者」が1万827件(4.3%)となった。

助言・指導申出件数は前年度比8.1%増の1万363件となり、初めて1万件を突破。あっせん申請件数は同7.1%減の6,047件と2年ぶりに減少した。

助言・指導申出内容の内訳を見た場合、前年度までと同様に「解雇」が首位となったが、件数は前年度比9.7%減の1,811件と2,000件を下回った。一方、2位の「いじめ・嫌がらせ」は同18.3%増の1,735件と大幅に増加。以下、「労働条件の引下げ」が同9.7%増の1,084件、「退職勧奨」が同1.1%増の900件と続いた。

あっせん申請内容の内訳を見ると、トップは「解雇」で前年度比21.2%減の1,904件。次いで、「いじめ・嫌がらせ」が同15.7%増の1,297件、「退職勧奨」が同9.8%増の574件、「労働条件の引下げ」が同13.7%減の515件となり、相談件数、助言・指導申出内容と同様にパワハラが増加傾向にあることがわかった。

「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主間での労働条件や職場環境などをめぐる紛争の未然防止や早期解決を促進するための制度。幅広い分野の労働問題を対象とする「総合労働相談」、個別労働紛争を解決するために都道府県労働局長が行う「助言・指導」、労働局長が紛争調整委員会に委任して行う「あっせん」の3つの方法がある。