城島高原パークの地形に合わせて、米国企業が設計したという「ジュピター」

湯布院、別府と大分屈指の観光スポットからクルマで15分の距離にある「城島公園パーク」。この大自然に囲まれた遊園地に、日本で初めて作られた木製コースターがある。その名は「ジュピター」だ。乗り心地を絶叫しながら体験してみた!

ループの姿はまるでバベルの塔

デビューは1992年7月で、総工費は25億円かかったという巨大木造建築物。木が幾重にも複雑に組み合わされた奇妙なカタチをしており、レールの土台は何と6万本の米マツで組み上げているそう。特にループの部分はバベルの塔を連想させるほど壮大だ。

高原の遊園地だけあり、高いところからの見晴らしは最高。このスケールの大きさは、木製コースターの故郷・アメリカを連想させる。ちなみにジェットコースターはもともと木製からスタートしたらしいのだが、強度や作りやすさなどを理由に、今日ではスチール製にとって変わられた。レトロな雰囲気を醸し出すのは当然かもしれない。

映画「インディジョーンズ」のトロッコ列車のような世界。興奮しないわけがない

さて、「城島高原パーク」の入園券+乗り物パス券のセットは4,000円だ。逆に言えばこれだけ払えば何回でもジュピターに乗れる。すばらしいではないか! トロッコのような車両がカタカタとやってくる。うーむ、例えて言うなら西部劇、いやインディ・ジョーンズの世界と言うべきか。これで天空の世界に連れて行かれるのだ。

そもそも「DO NOT STAND UP」なんて無理っ!!

シートに座り、ガチャッと安全バーを腰に落とす。バーはやたらと太いが、これが唯一のセーフティネットだと思うと、太い分安心というものだ。しかも、この太い安全バーが木製コースター特有の振動を和らげてくれるのだ。

そして、いよいよスタート! いきなりのキャメルバックを経て、木組みの中に連れて行かれる。そしてやっと、カタカタカタと高さ42メートルの頂点へ。頂点ではジュピターの全景はもちろん、遠くの山々も一望する絶景! そして急降下。「DO NOT STAND UP」との看板が見える。つーか、誰がここで立つかよ!!

アップダウン中心のコースはスタンダードと言えるものだが、ファーストドロップは横Gのかかるひねり落としなど、国内の他の木製コースターとは一線を画するコースだ。途中、減速してホッとすることもあるけれど、油断しているとスピードを上げてくるので要注意。木製コースターだけあって、とにかくスチール系と比べるとガタガタと振動がすごい。

ハンズアップの姿勢を取ると、振動がよりリアルに感じられる。緊張感と相まって心臓がバクバクする。長さは1,600メートルあり、国内コースターの中でも有数の距離を誇っている。乗車時間は2分35秒だ。

「木製」→「木星」→「ジュピター」という名称が生まれたという

刺激がほしい人は午後のライドを

木製コースターならではの恐怖感としては、やはりその振動だろう。ガタガタガタガタ……という揺れは、鉄製のスムースなコースターでは味わえない恐怖だ。特に裏技として、午前中よりも車輪に塗られる潤滑剤のグリスが温まった午後の方がスピードアップし、それに比例して振動も大きくなるという。ちなみに最高速度は公称91キロだ。

同パーク副支配人の首藤忠さんに、ジュピター建設のウラ話を聞いてみた。「このコースターは、城島高原の地形に合わせてアメリカの会社に設計してもらったものです。でも、当時の法律では木製コースターの建設許可が、環境庁(当時)から下りなかったんですよ」。そこから折衝を重ね、苦労して完成までこぎ着けたそうだ。

日本にもいくつかの木製コースターがあるが、すべてジュピターという「前例」がなかったら作れなかったことになる。ジュピターは、ホントの意味でのさきがけなのだ。

最後に、どうしても気になることを聞いてみた。「あの~、ジュピターって、やっぱり、モクセイってことで名前が付いたんでしょうか?」「ああ、そうですよ。ジュピター(木星)からね。ハハハ……」。最後はズッコケたが、デビュー20年を経た今も愛され続ける元祖・木製コースター。普通のジェットコースターに飽きた方、一味違うスリルと恐怖のひと時をここで体感してみてはいかがだろうか。