ほとんどの人が虫歯に悩んだことがあると思いますが、あの痛い治療がこわくて放置してしまうことが多いのも事実。しかし、放置すると死にいたることがあるとか。その真偽を確かめるとともに、虫歯にまつわる雑学について、むつみデンタルクリニックの院長、倉田友宏先生に教えてもらいます。
虫歯が体の病気を誘発することも……
――虫歯を放置していると、死んでしまうこともあるって本当ですか?
「めったにありませんが、本当です。虫歯を放置していると、虫歯菌が血液中を通り、脳に移動して脳梗塞を、心臓に移動して心筋梗塞や心内膜炎を引き起こすことがあります。また、お年寄りは肺炎になることも。
虫歯で穴があいたままの歯をずっと放置していたり、歯の治療をした部分の歯茎が不自然に腫れたりしたのを放置すると危険かもしれません」
――本当だったのですね。いつかは虫歯が治るんじゃないかと期待してしまって、つい歯医者を敬遠してしまいます。一度、虫歯になった歯は治らないのですか?
「歯の表面が白く濁った状態の『初期虫歯』は、きちんと磨くことで再石灰化して治ることもありますが、色がついたり、穴があいてしまった歯は治りません。お手入れや生活習慣で進行を遅くすることはできますが、一度なってしまった虫歯は治らないのです」
今の、歯科治療は予防がメイン
――歯の治療ってこわいんですよね。それに、削ったら、歯が減ってしまうので、できるだけ削りたくありません。
「そんなにやたらめったら歯を削る歯医者さんはいないと思いますよ。今は『極力歯を削らない』という治療が主流ですので。歯を削ってしまうことで、その場所が虫歯になりやすくなってしまうこともありますしね。
ですから、ある程度ブラッシングや食生活の習慣が確立されていて、定期的に検診に来ていただける方でしたら、歯を削らないで虫歯の様子を見ることもあります」
――歯を守りたければ、検診に行った方がいいのですね。どのくらいのスパンで検診に行けばいいのですか?
「人によって違いますが、3か月~半年に一度は行ってほしいですね。かかりつけの先生に治療が終わった後に聞いてみるといいでしょう。今、歯科治療は予防がメインになってきています。美容院に行くのと同じ気持ちで、定期的に来院いただければと思います」
虫歯体質はお手入れでカバーするしかない
――甘いものを食べると、虫歯になりやすいのですか?
「甘いものを食べると、口の中が酸性の状態になります。酸性の状態が長く続くと虫歯になるのです。甘いものを食べたら、なるべく早く、口のケアをするといいでしょう。
酸性である果物やジュース、スポーツドリンクなども注意が必要です。虫歯でなくても歯が溶けてしまう『酸蝕歯』という病気になりやすいため、飲んだ後は口をゆすぐようにしましょう」
――ちなみに、虫歯って、キスをしたら感染するのですか?
「大人同士でしたら、よほど免疫力が弱っていない限り、大丈夫でしょう。けれども、0歳~2歳半くらいまでの子供には、お母さんやお父さんから虫歯菌や歯周病菌がうつる可能性があります。小さい頃に他人から菌がうつったかどうかで、子供が虫歯体質になるかどうかが決まるのです」
――一度なってしまった虫歯体質は変わらないのですか?
「変わりません。虫歯体質の人はその分、お手入れをしていいただくのが一番の方法だと思います。しっかりと毎日お手入れをして、定期的に歯科医院でチェックしてもらうことで虫歯ができにくい口腔環境を整えることはできます」
――お手入れには、やはり歯ブラシが最適でしょうか? 毎食後に磨いた方がいいのですか?
「できれば毎食後、磨いていただきたいですね。虫歯は夜眠っていて、唾液が出にくい状態のときに進行しやすいため、1日1回、眠る前は特にしっかり磨いていただくといいでしょう。
歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシで磨き残した部分を磨くと更に効果的です。歯科医院で歯科衛生士さんにご自身の磨きぐせのチェックをしてもらうといいですね」
毎日のお手入れが大切なのですね。自分だけだとモチベーションが続かないので、検診に行きつつモチベーションを維持したいと思いました。
取材協力:むつみデンタルクリニック 倉田友宏先生
(OFFICE-SANGA 臼村さおり)