「味工房みその」の「まぐろラーメン」(750円)は上品な味

九州でラーメンといえば、博多、熊本、鹿児島などが有名。特に鹿児島は店ごとにスープの系統も異なり、具材もバラエティ豊かなことで知られる。そんな当地で個性的と評価が高いのが、いちき串木野(くしきの)市で食べられるまぐろラーメン。いったいどんなラーメンなのだろうか?

一回の水揚げで家が建つほど、まぐろで栄えた町

「和風レストランわらじ」の「まぐろラーメン」(750円)は、まぐろのそぼろに野菜がたくさん

いちき串木野市は鹿児島県の中西部にある。まぐろラーメンを開発した「串木野まぐろラーメン共栄会」事務局長・松田さんに話を伺ったところ、同市は昔からまぐろの遠洋漁業の基地として栄えた港町という。かつては一回の水揚げで家が一軒建ったというほどの漁獲高を誇り、漁船が帰港すると町中にまぐろがあふれ返ったそうだ。

しかし、時代の流れで漁業は斜陽化。そこで10年ほど前、まぐろを使って何かできないかと飲食店店主や食品関連会社の社員が集まり、知恵を絞った。その結果、まち起こしにもつながるだろうと期待を込めて開発したのがまぐろラーメンだったのだ。

まぐろラーメンのスープは、まぐろの頭とにんにく、しょうがなどを煮込んだまぐろスープと、鰹(かつお)や昆布などから取った白ダシをブレンドしたしょう油ベース。麺は中細のちぢれ麺で、最大の特徴は、チャーシューのかわりに生のまぐろを特製タレにつけた“漬け”を使うことだ。

まぐろ漬けと竜田揚げをトッピングした、大衆中華「蘭蘭」の「まぐろラーメン」(700円)

実食に出掛けたのは、地元の老舗中華料理店「味工房みその」。地元客に混じって観光客もよく訪れる人気店だという。早速ラーメンをオーダー。待つことしばし、運ばれてきた丼を見てみると、透明感のあるスープの上に白ネギがこんもり盛られ、赤身の色も鮮やかなまぐろ漬けがほとんど刺身状態でのっている。

丼からはしょう油の香りが立ち上り、上品な印象。湧き出るツバを飲み込み、スープの熱で周囲がレア状態になったまぐろをいの一番に口に入れると、んん、とろりとした食感。まぐろのうまみが口いっぱいに広がる。薬味のわさびもいいアクセントだ。

麺をいただくと、ダシがきいた品のいいスープとちぢれ麺が好相性! 白ネギやモヤシのシャキシャキ感もおいしさを助長し、瞬く間に完食してしまった。ちなみに、まぐろは扱い方によって生臭さが出るというが、全く臭みもなかった。

鹿児島県人の個性がさく裂

現在、いちき串木野市内でまぐろラーメンを提供するのは6軒。同じまぐろラーメンの名を挙げてはいるが、店ごとに個性が際立っている。

例えば「和風レストランわらじ」では、まぐろのレアステーキ、温泉たまご、レンコン揚げ、まぐろのそぼろなどが具だくさんにのる。大衆中華の「蘭蘭」では、まぐろの漬けのほかに和風味のまぐろの竜田揚げをトッピング。また、まぐろの炙りを具に、しょう油味であっさり味を追求した「ゆのまえ食堂」や、塩、みそ、みそトンコツなど、コク旨系のスープで勝負する居酒屋の「酔匠の里」など、味のイメージも異なる。

こちらはまぐろの炙りで勝負! 「ゆのまえ食堂」の「まぐろラーメン」(680円)

「酔匠の里」の「まぐろラーメン」みそトンコツ(750円)

共栄会の松田さんよると、人と違うことをしたいという思いが強い鹿児島県人気質が、個性的なまぐろラーメンを生み出しているのではないかということだった。誕生11年を迎え、新たな味の開発にも乗り出したいというまぐろラーメン。是非、現地に行って味わっていただきたい。

●information

和風レストランわらじ
いちき串木野市昭和通り116

大衆中華蘭蘭
いちき串木野市昭和通285

酔匠の里
いちき串木野市旭町72