丸ごと1羽が1,500円。大須のブラジルチキンには休日ともなると長蛇の列が並ぶ

手羽先や名古屋コーチンの存在が示すように、名古屋人はチキン好きだ。その名古屋でも有数の商店街の大須に、チキンマニア垂涎(すいぜん)のB級フードがあることをご存じだろうか? その名も大須名物「ブラジルチキン」。今回は私、名古屋育ちのライター石黒が現地レポートしよう。

ブラジルのポピュラー料理がいつの間に大須名物に

商店街の一角にあるブラジル料理店「オッソ・ブラジル」で食べられるこのブラジルチキン、決して「名古屋名物」と銘打っていないところがイイ。

商店街の一角にあるブラジル料理店「オッソ・ブラジル」緑の看板が目印だ

簡単に言うと丸鶏のローストチキンだ。さらに言えば、ブラジルでは最もポピュラーな料理なので、店オリジナルの料理でもない。店も客も(名古屋育ちの筆者も)当初は「大須名物」だと意識していたわけではない。

しかしそのウマさが名古屋在住のブラジル人はもちろん、日本人の間にも口コミで広がり、いつの間にか大須名物として認知されていったのだ。

店に入ってまず驚かされるのが、店頭のグリルマシンだ。商店街の人出が多い休日にもなると、2台の巨大なマシンがぐるぐるとチキンをローストしている。

一体何羽いるんだろう、とにかくド迫力(笑)。チキンは1羽1,500円。食券を買って、それをグリル前の店員に渡すと、チキンをグリルから出してくれる。この店のいいところは、店先のテラスで出来立てのチキンをそのまま食べられること。食べやすいようにハサミで豪快にカットしてくれるのだ。

ワイルドなサービスが目の前で繰り広げられる。エンターテイメント性は抜群

店特製のビネガーソースでブラジルならではの味に

取材した日は休日だったからか、見回すとテラスのテーブルは一杯だ。お客はブラジル人もいるし、日本人もいる。近年メディアへの登場が多くなったので、雑誌片手に来店する人も少なくない。

チキンはテイクアウトもできるが、できれば出来立てアツアツをその場で食べてほしい。マシンから取り出したばかりのチキンをカットすると、中の熱で湯気が立ち込め、ジューシーな肉汁が滴り落ちてくる。

チキンは丸一日下味に漬け込んであるから、全体に味がじんわり染みている。じっくりローストされているため、外の皮はパリッと香ばしく、中はふっくら。

丸鶏なので、いろいろな部位を味わうことができるのも魅力だ。うまみの凝縮されたモモはもちろん、あっさりした胸、ヘルシーなささみなど、食感の違いを楽しめるのがうれしい。全体に行き渡った、隠し味となるニンニクの風味も食欲をそそる。ビールと一緒に食べれば最高だ。

ひと通りプレーンな味を堪能したらひと味プラス。店特製のビネガーソースをかけよう(後で聞いたところによると、これは「ビナグレッチ・モーリョ」と言うらしい)。

店特製のソース「ビナグレッチ・モーリョ」(=ビネガーソース)と一緒に味わうのも◎

ソースはスパイシーで酸っぱくて、味ががらっと変わる。バーベキュー好きなブラジルならではの楽しみ方なのだろう。ソースとの相性のよさを満喫するのも楽しく、丸鶏だからボリューム満点だとはいえ、2人でならペロリと食べられる。

回転が早いため、いつでもできたてが食べられる!

スタッフはとにかく忙しそうだ。スキを見て「一日にどれぐらい出るの?」と聞いてみたところ、「たくさん出るね」。そりゃ答えになってないだろ(笑)。

しかし、少し暇になったところで、もう一度同じ質問を投げかけたら、「土曜日なら150から200、日曜なら200から250」というすごく細かい数字が返ってきた。

考えてみたらこの回転の速さこそ、味を保つ秘訣(ひけつ)なのかもしれない。それはすなわち、「常に出来立てが食べられる」ということ。作りおきに当たることはまずない。だからこそ大須名物の称号が与えられるのだろう。

ちなみに、一年でもっとも忙しいのはクリスマスの時期だとか。かくいう筆者もクリスマスの時期にチキンを買いに行ったが、あまりにすごい行列で諦めたという経験がある。

なお、この店はブラジル料理店であって、チキン専門店ではないので誤解なく。モチモチのチーズパンやいろいろなブラジル料理もそろっているのだ。ご飯をつけてランチ風に食べることもできるので、ぜひ試してみてほしい。

ライター/石黒昭弘 愛知県出身 名古屋を中心に中部圏のカルチャーを発信し続ける

●information
オッソ・ブラジル
名古屋市中区大須3-41-13