定番なものからハイセンスはものまで、様々な文具が揃う「文房具カフェ」。そのプロデューサーであり、ロゴやフライヤー、紙面デザインのほか写真のレタッチまで、多岐にわたるデザインに関する仕事を手掛けてきた、デザイナー・くすきはいね。そんな彼女が仕事をする際、重宝している"文具"がある。それがペンタブレット「Intuos5」だ。なぜ、彼女はこのプロダクトを手放せなくなったのだろうか。その魅力を聞いた。

デザイナー・くすきはいね

――まず、現在どのようなお仕事をしているのか、教えて下さい。

くすきはいね「結構、なんでもやりますね(笑)。ロゴでも紙面でもWebサイトでも、グラフィック全般のデザインです。どのようなデザインをするにせよ画像素材も必要で、だから写真も自分で撮りますし、撮ったらその写真のレタッチも必要になります。最近では女性の画像をレタッチする仕事も多くなってきました。シミ、シワ、あごといった細かい部分の修正の場合は10~20くらいのレイヤーに分けて作業しています。ほとんどの作業を自分でするので、自身が頭のなかでイメージしていた"完成予想図"と"実際に完成するもの"がぐっと近い感じ。それもあって、できるだけなんでも自分でやるようにしています」

――そうなると、やはりデジタル上での作業も多くなりますよね。今は「Intuos5」を利用しているとのことですが、いつ頃からペンタブレットをお使いなのでしょうか。

くすきはいね「私にとっての初ペンタブレットは「Intuos2」だったので、2003年頃ですかね。当時、自分のなかで"絵を描くならペンタブレットでしょ"というのが漠然とありました。ちょうど時代的にも手描きからデジタルへの変換期だった気がします。まだ漫画家さんも完全手書き、スクリーントーンを手作業で貼っている方も多くて(もちろん今もいますけど)、そこまでしてからスキャンしてデジタルデータにしているような時代でしたから。作業を考えたら今の何倍も時間かかっていたんじゃないかな」

――そんな時代背景がありつつ、導入したペンタブレットですが、使い心地はどうでしたか。

くすきはいね「すぐに違和感なく使えたかと聞かれればそれはなかったと思います。最初はペン先や手と画面との距離感にギャップがありました。でも、そんなことよりもペンタブレットとPhotoshopを使えば、パステルをわざわざ削らなくても、ぼかしツールひとつあれば、イラストをキレイに描けますし、簡単に消すことも修正することもできる。それが凄く画期的で、デジタルでの作画にハマったことを覚えています」

――で、今は「Intuos5」をお使いなわけですね。

くすきはいね「私の場合は「Intuos2」の次が「Intuos5」だったわけですが、筆圧感知能力や操作の直感性がもの凄く向上していて、その性能の進化に驚きました。そのなかでも一番気に入ったのがカスタマイズ性ですね。デザイン関連のお仕事をしている人たちは自分独自のやり方をもっている人が多いんですよ。しかも、私を含め、その自分のやり方を曲げない人が多い(笑)。そんな人たちにもこれだけカスタマイズすることができれば対応できると思うんです。ユーザーごとに使うツールの頻度も違いますが、好きなショートカットキーを割り当てることにより、誰でも快適に操作できるようになったと思います。実際、私は不満はないかな。コピースタンプツールと消しゴムツールを多く使うのでこのふたつを使いやすい位置に割り当てています。まだこういったカスタマイズに慣れていない人にはペンからカスタマイズすることをオススメします。ファンクションキーはその次かな」

――替え芯にも色々な種類があります。

くすきはいね「そうなんです。替え芯も、自分がこれまで創作時に使っていたシャーペンやサインペンに似た感覚のものがあるので、アナログでの創作に近い感覚でデジタル上での作業を行えることは凄く嬉しいです」

――最近はレタッチのお仕事も増えてきているということですが。

くすきはいね「レタッチ作業にもペンタブレットは最適だと思います。これまでマウスを使って作業をしていた人だと、ある程度独自のルールが出来上がっていて、まだ使っていなかったり、試していない新しい機能に挑戦しなくなる傾向があるんですが、ファンクションキーなどをカスタマイズして、うまく利用することで、これまで使っていなかった機能にも挑戦するようになると思うんです。クリエイターにとって、使える機能が増えるということはそのままデザインの選択肢が増えることにつながりますから。クリエイターとしての技術向上にも役立つんじゃないでしょうか」

――なるほど。

くすきはいね「あと、私はPhotoshopやIllustratorなどのソフトを使うのですが、そのツール毎にペンタブレットに割り当てる機能も変わってきます。Intous5の場合は、各ソフト毎に割り当てを設定でき、ソフトが切り替わるタイミングで自動的に割り当ても切り替わる点が嬉しいです。より快適な作業環境で仕事を行うことで、作業効率が凄く上がる。例えば、これまで1時間かかっていたような作業を10分は短縮できると思うんです。私たちの仕事は時間的にタイトな場合が多いので、10分でも短縮できると凄く助かりますね」

――より良い仕事をするためには作業環境を整えることは重要ですからね。

くすきはいね「そういった面でいえば、今回のバージョンではワイヤレスになっている点も嬉しいです。机に余計なコードがあるのが嫌なんです。絵的に(笑)。とにかく気になるのでこれまでは、床にコードを貼り付けたりして対応していたくらいですから(笑)。そういった点においても、ペンタブレットがワイヤレスになったことはいいことですね」

撮影:石井健