水城公園には忍城を再現したものがある

埼玉県行田(ぎょうだ)市は知る人ぞ知る人気歴史スポット。映画「のぼうの城」で有名になった「忍城址(おしじょうあと)」に「さきたま古墳群」など見どころ満載なのだ。都心からもJR湘南新宿ラインや高崎線でさっと行ける場所だから、今度の休みはちょっと歴史散策に行ってみてはいかがだろう?

歴女に大人気の、男前に赤っ恥をかかせた地

石田三成といえば、昨今、歴女にかなり人気の高い武将だ。生まれは1559年。近江の石田村の出身と言われ、羽柴秀吉が近江長浜城主の時代に小姓となり、瞬く間にその才能を見いだされ、やがて豊臣政権の中心人物となった人物だ。

融通のなさとエリート然とした態度で人望のなかった孤高の人。しかし、繊細で不器用なほどに生真面目、クールで抜群に頭が切れたという。そして、豊臣家への忠義を生涯貫き、かの徳川家康との天下分け目の戦いに敗れ、40歳という若さで亡くなっていることなどが人気の理由だろうか。

明治に描かれた肖像画の印象からか男前というイメージも強く、ドラマでも必ずといっていいほどイケメンが演じ、ゲームなどに登場する時にもたいていは美男子として描かれている。

そんな男前が赤っ恥をかいた地が埼玉県にある。2012年に公開になった映画「のぼうの城」の舞台になった行田市だ。豊臣軍の小田原城攻めに伴い、三成は行田市にあった忍城を取り囲み、豊臣軍の十八番である水攻めを行うも大失敗で、荒川から水を引き込むために作った堤が決壊。

「三成は頭はいいが戦はダメなヘタレ男」というイメージがついてしまうきっかけとなった戦だ。同僚の加藤清正や福島正則が、勇猛果敢な武勇伝をいくつも残しているのとは対照的ななんともトホホな話。

内部が郷土資料館になっている御三階櫓

四季おりおりの景観を見せる水城公園

しかし、迎え撃った忍城の成田氏にとっては都合のいい話。わずかな手勢で豊臣軍を撃破したというのも、なんとも痛快の極みであったに違いない。とはいえそんな話をされても「埼玉に城なんてあるの~?」と思った方も多いはず。埼玉県民でさえ正直、ぴんとこない人が多数だろう。しかも、関東七名城のひとつだと言われても……。

それもそのはずで、忍城は明治時代に取り壊されてしまっていたのだ。しかし忍城址には、外堀址を利用した水城公園などがあり、その歴史の香りを今も伝えている。御三階櫓(おさんがいやぐら)も復元され、内部は郷土博物館として利用されているので、戦国時代の資料も見ることができる。

「のぼうの城」でも描かれた石田三成との攻防の様子も分かりやすく説明されているので、映画を見て興味を持った人は、足を運んでみるのもいいだろう。また、公園内には水攻めの時に三成が造ったと伝えられる堤“石田堤”も残っている。

石田三成が築いた石田堤が残っている

●information
忍城址
埼玉県行田市本丸17-23

城だけじゃない!  行田は古墳もあるパワースポット!?

ところで、行田市の歴史スポットはここだけではない。実は行田市は隠れた歴史の宝庫。忍城址から車で10分も走れば見えてくるのが“さきたま古墳”の道案内表示。なんと古墳が9基もあるのだ。

さきたま古墳群の「さきたま」は「埼玉」の語源になったとされ、日本書紀が作成された頃の、武蔵野国国造の墓ではないかと考えられているが、まだまだ謎は多い。ほとんどが前方後円墳の中で、唯一の円墳として丸墓山古墳がある。

ここもまた、「のぼうの城」の舞台となった地。水攻めの際に城がよく見えるこの古墳に、三成が登って眺めたのだという。現在でも登ってみることができるので、ぜひ往時の気分を味わってほしい。

この古墳がある場所は「さきたま古墳公園」として整備され、親子連れが散歩していたり、ベンチで憩っていたりと、ほのぼのとした雰囲気だ。たまたま行きあったおじいちゃんと話をしたところ、「今は快適な公園だからよく散歩に来るよ。だけど昔は全然整備なんてされていなくてね、変な小山があるなあ、なんて感じだったんだけどねえ」とのこと。

そう、ここが見直され整備とされたのは昭和48年(1973)頃のこと。それ以前は文字通り、歴史に埋もれていた場所なのだ。しかし今では博物館も設置され、立派な歴史スポットとなっている。

一面、きれいな芝生が広がるさきたま古墳公園

ところで、これだけの古墳がここに作られたということは、ここがエネルギースポットとかスピリチュアルスポットだからではないのか、という声もある。確かにこの一帯は日本の歴史の大きな足跡を感じさせる場所であり、“絶対に落ちなかった忍城の城跡”“古代ロマンのさきたま古墳群”にいると、強いパワーをいただけるような感じがしてくる。

●information
さきたま古墳公園
埼玉県行田市埼玉4834

ヘルシーでホクホクな、行田名物“ゼリーフライ”

強大なパワーをたっぷりいただいた後は、腹ごしらえしてさらにスタミナをたくわよう。行田のご当地グルメとして有名なゼリーフライはどうかしら? ちなみにゼリーフライとは決してゼリーを揚げたものではなく、小判型のおからのコロッケのことなのでご注意あれ。

その形が“銭(ぜに)”に似ていたことから“ぜにフライ”がなまって“ゼリーフライ”になったとも、最初に作った人がハイカラな名前をつけたいと思い横文字のゼリーフライと名付けたとの説もある。

いずれにしてもホクホクしておいしいのだから、名前の由来なんてどちらでもよくなってくる。おからを使っているため普通のコロッケよりもヘルシーだから、女性でも安心してパクパクと食べられる。

ゼリーフライを置く店は市内に数多くあり、小さなスタンドで気軽に購入することもできる。ゼリーフライを食べながら、もう一度忍城址を眺めるのもいいかもしれない。

ホクホクおいしいゼリーフライは小腹が空いた時に最適