現在米Appleが発表している本社キャンパスの移転計画だが、その計画実施を前に近所にショッピングモールや貸しオフィスといった不動産業者や地主らは、にわかに沸き立っている状態だという。同本社のある米カリフォルニア州クパチーノでは近隣の他地域に比べてオフィスのレンタル料が際立って上昇しているほか、これを気に商業施設のリニューアルや拡充を計画する事業者も出るなど、地域開発のきっかけとなっているようだ。

同件はWall Street Journalが報じている。現在Appleが本社を置くクパチーノ市内の「1 Infinite Loop」から、移転予定の新キャンパスまでの距離はわずか1マイル(1.6km)。場所もクパチーノ市内のままであり、高速道路のI-280を挟んでほぼ向かいにある。新しく大企業を迎えて雇用を確保するわけではないものの、これだけの大規模プロジェクトとなると地元に対する刺激も大きいとみられる。WSJによれば、昨年のクパチーノにおけるオフィスのレンタル費用は前年比で40%増と、同市が属するサンタクララ・カウンティ(Santa Clara County)全体平均の年率9%増に比べると際立って高い。全体にオフィス賃料や家賃が高めのシリコンバレー界隈だが、中でも世界トップクラスの企業へと成長したAppleに期待する声は大きいようだ。不動産事業者らによれば、長年凍結されていたプロジェクト群がここにきて一気に活性化しているケースもみられ、拡大を続けるAppleがオフィスや住宅面で需要を喚起することを期待している様子がうかがえる。

実際にAppleキャンパス移転がどの程度地元経済に還元されるかは未知数な部分が大きいが、とりわけ不動産事業者らが期待しているのが商店売上への貢献だ。例えば新キャンパスの道路向かいにCupertino Villageというショッピングモールを抱えるREITのKimco Realtyでは、Appleの移転計画発表直後からホテルグループや高級ブランド各社の接触がひっきりなしに続いているという。Appleキャンパスを訪問するエグゼクティブや高所得者層をターゲットに、同地を活用してセールスを展開していくのが狙いのようだ。Kimcoによれば、現在はスターバックスや中華料理店の多数並ぶ同モールだが、大規模な改装を計画しており、同時にホテル運営会社らに土地をリースする予定だという。

なおWSJの記事ではAppleの新キャンパス建設は来年2013年にもスタートすると報じられているが、こちらは再来年以降に延期される可能性が高いとの観測が出ている。そのため、移転は当初の2015年から2016年へと遅れるとみられる。とはいえ、移転計画そのものは継続であり、こうした開発事業者には準備期間が若干増えたといった状況だろうか。