味の素は、独自配合のアミノ酸素材「ロイシン高配合必須アミノ酸混合物」の摂取が、筋タンパク質の合成を高めることを通して、運動後の筋肉疲労に対する早期回復効果を示すことを、筑波大学大学院との共同研究などにて明らかにしたと発表した。同成果の詳細は、2012年9月14日から岐阜県で開催される「第67回 日本体力医学会」にて発表される予定だ。

運動やトレーニングを実施すると筋肉が損傷し、筋力パフォーマンスの低下といった筋肉疲労が生じる。トップアスリートなどの場合、日々の過酷な練習やトレーニングによる疲労やだるさが残る結果、運動機能の低下をきたすようになったりする。

ロイシン高配合必須アミノ酸混合物は、同社が独自に配合したアミノ酸素材で、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一種として知られるロイシンを高配合し、計9種類の必須アミノ酸を組み合わせたものとなっている。タンパク質の材料となる必須アミノ酸に加えて、その1つであるロイシンをさらに高配合することで、より高い筋タンパク質合成能を実現することができるという。

今回の研究は自社での「動物投与試験 」と筑波大学大学院との「ヒト摂取試験」の2つが実施された。前者はラットに伸張性収縮し、その30分前、および1時間後にロイシン高配合必須アミノ酸混合物を1g/体重kg、もしくは対照群として水を投与して行われた。筋肉痛は圧痛計を用い、痛みに反応した際の荷重を圧痛しきい値として測定が行われた。

その結果、伸張性収縮を負荷した翌日において、対照群では圧痛しきい値の低下(筋肉痛レベルの上昇)が明らかであったものの、同混合物摂取群では、しきい値の低下が抑えられていることが確認された。これらの結果より、ロイシン高配合必須アミノ酸混合物は、伸張性運動後の筋肉痛の軽減に有用であると考えられることとなったという。

圧痛しきい値の測定方法のイメージ図

試験期間中の圧痛のしきい値。運動あり、アミノ酸摂取群は、対照群に比べて明らかに回復し、運動なし群との差がないほど回復していることが確認された

後者の実験では、男子学生10名に、アームカール運動による負荷をかけ、その運動当日から7日後まで、ロイシン高配合必須アミノ酸混合物またはプラセボを1日3回、1回あたり3.6g摂取させ、運動前、運動直後、運動の翌日以降7日後までの期間に、疲労感と筋肉痛(視覚的評価スケールによる主観的評価法)、および筋肉損傷(血中指標による客観的評価法)の程度を調査した。

その結果、疲労感および筋肉痛は、同混合物摂取群では対照群に比べて軽度に推移することが確認されたほか、同混合物摂取群では、筋肉損傷に伴って増加する血中のクレアチンキナーゼやミオグロビンの濃度も、対照群に比して抑制することが認められたという。

多用途筋機能評価運動装置を用いたアームカール運動負荷の様子

アミノ酸摂取により、運動後の疲労にかかわる自覚症状は観察期間を通じて軽減された

研究グループではこれらの結果より、ロイシン高配合必須アミノ酸混合物の摂取は、運動による筋肉損傷を回復するとともに、筋肉疲労の回復を促進すると考えられるとの結論を得たという。

なお、同社ではこうした成果を背景に、同素材を2012年8月12日に閉幕したロンドンオリンピック日本代表選手団を支援する活動の一環として、日本オリンピック委員会(JOC)に独占供給を行ったことを明らかにしており、今後は同素材をスポーツ領域のみならず、さまざまな生活シーンにおいて幅広い人々の健康的な生活に貢献することを目指して研究を継続していくとしている。