JR東日本は30日、列車脱線事故により全線で運転を見合わせていた岩泉線(茂市~岩泉間)について、鉄道としての復旧を断念することを発表した。今後は同社の責任において、バスによる地域の交通を確保したいとしている。
同路線では一昨年7月31日に、押角~岩手大川間で崩壊した土砂に列車が乗り上げ、脱線する事故が発生。8月2日より代行バス輸送が行われた。このときの土砂崩壊は先行降雨が少ない中で発生しており、有識者を交えた「岩泉線土砂崩壊災害原因調査検討委員会」によって、発生原因とメカニズムの解明、全線における安全性の評価、災害防止対策の検討などが行われてきた。
調査の結果、大規模な岩盤崩壊のおそれのある場所が23カ所、大きな落石のおそれのある場所が88カ所あることが判明。列車の安全運行に必要な対策費用は少なくとも約130億円とされ、列車の安全を確保するためには、多額の費用と長期にわたる工事が必要とされていた。
一方、岩泉線の平均通過人員(1日1kmあたりの通過人員)は、JR東日本発足時の1987年度は180人だったのに対し、2009年度は46人。JR線の中でも最も利用者の少ない路線となっていた。
こうした状況を考慮し、「岩泉線につきまして、誠に残念ながら鉄道での復旧を断念せざるをえないという結論に立ち至りました」とJR東日本。鉄道に代わる交通手段は同社が責任をもって確保し、岩手県、宮古市、岩泉町などの関係者に十分な説明と協議を行っていくとのこと。