「20%を突破」「1ケタ視聴率で打ち切りへ」。こんなニュースを見て、「エ~ッ、つまらないんだけど!」「こんなにおもしろいのに……」と感じたことはありませんか? 本稿では芸能通やコアなファンの支持を集める低視聴率番組を、愛情たっぷりに紹介していきます。

業界視聴率は「アメトーーク!」以上なのに打ち切り…『クイズ☆タレント名鑑』

MCを務めるロンドンブーツ1号2号の田村淳

1本目の低視聴率番組は、『クイズ☆タレント名鑑』(TBS系、日曜20時~)。「業界視聴率は、『アメトーーク』超える」と言われながら、現実の視聴率は8~10%と低迷しっぱなし。ただ、MCのロンブー淳は、「テレビがバカバカしい企画をやってた時代に戻す布石になる番組」と断言。さらに、3月での打ち切りを聞かされたときも、「ショックから立ち直れません」と異例のツイートをするほど、心底ホレ込んでいる番組なのだ。

「残り2カ月弱でも観た方がいい」と言える最大の特徴は、タレントへの徹底した"NOリスペクト"っぷり。こちらの想像をはるかに超える、脱力系おバカ企画の連発で、テレビ好きの心をこれでもかとくすぐってくれるのだ。

たとえば、ボードに書かれた芸名の中から、実在のモノマネ芸人を当てる『モノマネ芸人いる? いない? クイズ』。GO!ピロミ、河豚隆一、ミスッタチルドレン、アグネスチャンリンシャン、石川不遼、持ちだし香織、滝川ムリシテル、南こっせつ、松浦およよ……名前だけで微妙なクオリティーと苦しい芸能生活がビンビン伝わってくる(実在するので、ぜひググってみて)。さらに、せっかくテレビ出演できた彼らに「早く!(引っ込めろ)」「素人混ぜただろ?」などの容赦ない罵声を浴びせるパネラーたち。特に、有吉とフジモンの過剰な悪ふざけぶりに、芸人界の過酷な現実が見えてしまう。

打ち切りを嘆く田村のtweet

無謀企画ラッシュの『このオファーを引き受けた? 引き受けなかった? クイズ』もくだらない。布施博の猫ひろし、萩原流行の武藤敬司、石井明美の歌舞伎あるある、曙のマツコ・デラックス……いずれもタレント生命を賭けて、オファーを快諾。全力で本人になり切ってみせたのだ。ちなみに、拒否された花田勝の「子供時代の貴乃花」、角野卓造の「角野卓造じゃねえよ!」などのオファーも、全くの同レベル。結局、受けても受けなくても、タレントたちを小バカにしているところに、この番組の真髄がある。

2月5日放送の『モノマネされるまで帰れません』も、オードリー春日、小島よしお、ボビー・オロゴンなどに加えて、ショッカー、ニワトリも参戦する異種格闘技ぶり。飲み屋でプロデューサーと構成作家が、「ニワトリも入れちゃおうか!(笑)」「ショッカーもいいですよね」とか、ニヤけながら決めているにちがいないのだ。

たとえるなら、『元気が出るテレビ』のような無謀さと、『くりいむナントカ』のユルさを兼ね備えた……そんないいものじゃないか。ただ、くだらなさというぶっとい一本の柱で、全力疾走していることだけは間違いない。

コモドドラゴン以上の好敵手に出会えない『イッテQ!』(視聴率2月5日15.7%)や、ネタのバラつきが大きい『アカン警察』(同10.7%)と『大改造!!劇的ビフォーアフター』(同15%)、ましてや某県知事にイジられる『平清盛』(同16%)なんて見てる場合じゃない。っていうか、『続・タレント名鑑』とか番組名だけ変えて、シレッとリスタートしそうな気もするけど。でもこの番組に限っては、そんな"やめるやめる詐欺"は大歓迎だ。

最初は薄っぺらだったがテコ入れで化けた『Oh!どや顔サミット』

メインMCはダウンタウン浜田雅功

2本目のおすすめ低視聴率番組は、『Oh!どや顔サミット』(テレビ朝日系、金曜21時~)。当初は、芸能人がプチ特技や自慢話を披露するだけのペラペラな作りで、「1クールで打ち切りか?」なんて言われていたものの、徐々にマイナーチェンジを重ねて、まもなく1年。

内容は、新旧アイドル、恋愛、料理、ダイエット、美魔女など、よくあるワンテーマのトーク+生活実用バラエティなのだが、再現VTRがやたら強引でおもしろい。たとえば、いとうまいこ役をハリセンボン春菜、相手役にチャン・カワイ。国生さゆり役を椿鬼奴、相手役にアンガールズ田中など、どんな美男美女のエピソードも、男女ブサイク芸人が演じているため、全然"再現"ではなく、やはり"NOリスペクト"なのだ。

2月3日放送のテーマは、年の差婚。最初のエピソードは、31歳下の女性をいきなりホテルに誘って2回もHした山本文郎(再現はほんこん、相手役はオアシズ・大久保)。77歳のおじいちゃんが、「薬には全く頼らない」と言い切るどや顔に失笑が止まらない。さらに、16歳下の共演俳優の恋人を電話で説得して別れさせた秋本奈緒美(再現は森三中・村上、相手役はノンスタイル井上。ベッドシーン有り)などのエピソードを紹介した。

テーマの好き嫌いはともかく、出演者は旬のタレントや専門家を集めており、男性はデート時の話題作りに、女性は女子会ネタにと使い勝手のよい60分。10%前後をさまよう視聴率以上の価値は十分あるはずだ。大爆笑ってこともないし、毎週観る必要なんて全然ない。たとえば、日テレでジ●リ映画があるときや、『金スマ』のゲストに惹かれたときは、ナチュラルスルーでオールOK。でも全然観ないと消えてなくなりそうだから、ときどきかわいがってもらえませんか?

きむら・たかし

コラムニスト、芸能・テレビ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超える重度のウォッチャーであり、雑誌やウェブにコラムを提供するほか、業界通として『芸能★BANG!』(日テレ系)などに出演。取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもあり、著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。