米Appleは1月31日(現地時間)、プロフェッショナル用ビデオ編集ソフト「Final Cut Pro X」のアップデートをリリースした。バージョン番号はv10.0.2からv10.0.3にわずかに上がるだけだが、マルチカム編集の追加やXMLサポートの拡張が含まれる重要なアップデートになっている。

昨年6月に発売されたFinal Cut Pro Xは、まったく新しいソフトと呼べるほど大きく変化した。64ビットアーキテクチャで作り直され、バックグラウンドレンダリング、マグネティックタイムライン、コンテンツの自動解析など革新的な機能を装備。Appleのワールドワイドプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのフィリップ・シラー氏は「プロ用ビデオ編集の業界において、最初のFinal Cut Pro以来、最大の進化」と述べた。その一方で、以前のバージョンで作成したプロジェクトファイルの読み込みをサポートせず、マルチカメラ編集が省かれるなど、過去を断ち切るような大胆な進化に不満の声をあげるユーザーが少なくなかった。

v10.0.3はマルチカム・プロジェクト用の編集ツールを備えており、オーディオ波形、時刻と日付、タイムコードなどから最大64アングルのマルチカム・クリップを自動生成する。様々なフォーマット、フレームサイズ、フレームレートを混在させることが可能。Angle Editorを用いてマルチカム・クリップを細かく調整でき、Angle Viewerによって複数のアングルを同時に再生・編集できる。

またドラッグ&ドロップだけで作成できる簡単なクロマキー合成に、カラーサンプリング、エッジ調整、ライトラップなど高度なコントロールが追加された。これによりモーショングラフィックス・ソフトにエクスポートすることなく、Final Cut Pro X内で複雑なキー合成に取り組める。

過去のFinal Cut Proのプロジェクトを読み込む機能は用意されていないが、XMLサポートの強化によりサードパーティのアプリケーションやプラグインとの互換性が向上した。Intelligent Assistanceの新しい「7toX」では、XMLを用いてFinal Cut Pro 7プロジェクトをFinal Cut Pro Xにインポートできる。ほかにも「DaVinci Resolve」や「CatDV」と色補正やメディア管理のようなタスクの密接な連係が可能になるなど、Final Cut Pro Xのエコシステムが拡大している。

Final Cut Pro XはMac App Storeで販売されており、価格は26,000円。すでにFinal Cut Pro Xを所有しているユーザーは、同ストアより無料でv10.0.3にアップデートできる。