格付投資情報センター(R&I)は11月30日、日本ソブリンの信用力について、2011年に入り「政府債務の負担という面でAAAの維持はそろそろ限界に来ている」との見解を公表した。

世界的金融危機による経済の落ち込みへの対応などから、2008年度以降、新規国債の発行額が膨らみ、政府債務の累増に歯止めがかからなくなってきたことを踏まえたもの。その後、東日本大震災や原発事故に見舞われ、経済・財政に一段と負荷がかかった。R&Iでは、こうした情勢の下で、経済を早期に回復軌道に乗せ、財政健全化への道筋を付けられるか注視してきた。

R&Iは、「8月末に発足した野田政権が財政再建に前向きに取り組んでいる点は評価できる」としている。だが、「復興対策の遅れや円高の定着もあって景気の回復は力強さに欠ける」(R&I)。

さらに、欧州のソブリン債務危機の深刻化などから、外需の動向にも不透明感が強まっている。注目していた2012年度の予算編成も、一定の財政規律は維持される見込みではあるものの、「社会保障費の抑制など財政構造改革が先送りされそうだ」(R&I)。R&Iでは、税収が伸び悩むようだと、相当厳しい財政運営を余儀なくされるとみている。

以上のような状況を踏まえ、R&Iは、消費税率の10%への引き上げを2010年代半ばに実現できたとしても、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化の時期は、政府目標の2020年度から大きくずれ込むと予想。国内総生産(GDP)に対する政府債務残高の比率をAAAの許容範囲に収束させていくメドが立たない点を重視、日本の発行体格付を格下げ方向のレーティング・モニターに指定した。年内に新たな格付を公表する。格下げする場合も、その幅は1ノッチにとどまる可能性が高いとしている。