今回の大震災で、注目を集めているのが地震保険。その内容については、「今注目を集める「地震保険」、"意外に知らない"仕組みと補償の内容とは?」、「都道府県によっても異なる保険料…どんな人が「地震保険」に入るべき?」でご説明しましたが、地震への備えとしては、共済や地震補償保険も選択肢になります。今回はこれらの商品をご紹介します。
全労済の「自然災害共済」
共済のうち、地震保険に近い仕組みをもつのが、全労済の「自然災害共済」です。
自然災害共済が地震保険と同じなのは次のような点です。
単独では加入できず必ず火災共済にセットする
建物と家財は別々に加入する
支払われる保険(共済)金は被害の程度に応じて全損、半損、一部損の3区分に分かれている
自然災害共済には標準タイプと大型タイプがあり、標準タイプの加入限度額は火災共済の2割で最高額は1,200万円、大型タイプは3割で1,800万円となっています。
保険(共済)金額は、1坪当たりの加入基準額(55万円~90万円)に建物の坪数をかけた金額で、加入基準額は建物のある都道府県と木造か鉄筋コンクリート建てかで決まります。
細かい保障内容や、都道府県による区分が地震保険とは異なるので単純には比較できませんが、同程度の補償内容だと、地震保険より1~2万円ほど掛け金が安くなるようです。
JA共済の「建物更正共済むてき」
もう1つの共済商品は、JAの「建物更正共済(以下、建更)」です。
地震保険と異なり、地震に対する補償が火災共済に含まれています。地震保障部分の保険(共済)金額は火災共済額の50%までで、最高2億5,000万円です。
建更は、損害割合が共済額の5%以上であれば、実損額の50%を上限に、損害額に比例して共済金を支払うという特徴もあります。
地震保険の保険期間は1~5年ですが、建更は5年または10年で、継続特約をつけると20年、30年といった長期の契約も可能です。
掛け金は、都道府県の別なく全国一律です。掛け捨てでなく満期金があるため、掛け金は地震保険より割高といえます。
日本震災パートナーズの地震補償保険「リスタ」
地震に備える保険には、通常の地震保険とは別に、地震被災者の生活再建費用を手当するための地震補償保険「リスタ」があります。
地震保険と違って、地震補償保険は単独で加入することができ、火災保険+地震保険に上乗せして加入することも可能です。
また地震保険と同様に、地震補償保険の保険金は使い道が自由で、住宅ローンの返済や仮住まいの費用などに充ててもかまいません。
保険金額の最高額は、世帯人数で5段階に分かれています。人数が1人なら最高で300万円、3人なら600万円、5人なら900万円です。補償額は、住まいが全壊した場合は保険金額の100%、大規模半壊は2分の1、半壊は6分の1となっています。保険料は、建物のある都道府県と、木造か非木造かで決まります。
地震保険に比べると補償額が少ないのが難点ですが、地震保険に上乗せするとか、手頃な保険料で最低限の補償を確保するといった使い方ができます。
ただし、耐震基準が古い1981年6月以前に建てられた建物を対象にして加入することはできません。家財の補償がないので、家財だけが被害を受けた場合は保険金が受け取れない点にも注意してください。
中身を比較して選択を
火災共済の地震補償部分の掛け金は、地震保険料控除の対象となりますが、地震補償保険は対象外です。
地震保険は、損害保険会社と国が一体となって経営しており、国が保険金の支払いを保証していますが、火災共済、地震補償保険にはこの仕組みがないということは、知っておいたほうがいいでしょう。
火災共済や地震補償保険を含めると、地震への備えとしては「火災保険+地震保険」のほかに、「火災保険+地震保険+地震補償保険」「火災共済+地震補償保険」「地震補償保険のみ」といった組み合わせも考えられます。地震に対してどこまで備えるか、保険料(掛け金)がどの程度負担できるかに合わせて選ぶとよいでしょう。
執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。