米Hewlett-Packard (HP)は8月18日(現地時間)、同日行われたHPの2011年度第3四半期(5-7月期)決算報告において、PC事業を含む同社のPersonal Systems Group (PSG)のスピンオフなど、大幅な事業再編を計画していることを発表した。またPSG再編の一環として、TouchPadやPalmといったwebOS事業から撤退する計画だという。これにより、粛々と続いていたPalmの命脈は、HPによる買収を経て消滅へと向かうことになりそうだ。

PSG事業はトップシェアながらも利益率の低さがネック

同社会計年度で2010年度通年の決算報告によれば、通期での売上全体が1260億ドルで、PSGは407億ドルとおよそ全体の3分の1ほどを占める計算となる。米IDCが7月に発表したデータによれば、HPのPCにおける世界シェアは18.1%で、12.9%で2位のDellを大きく引き離してトップに君臨している。

このようにトップシェアを持ち、現在もHPの売上の多くを占める事業にもかかわらず、同社が事業分離を検討する理由は、利益率の低さにある。そんな事情が株主からのプレッシャーとして長年経営陣を苦しめており、今回の決断に至らせる結果となったようだ。なお、PSGの処遇は今後1年以上をかけてさまざまな方向性を探っていくとしており、前述のスピンオフによる会社本体からの分離のほか、事業の部分分割、他社への売却など、さまざまな可能性が考えられる。なお、Imaging and Printing Group (IPG)で知られる同社のプリンタ事業についてはPSGとは別所管のため、今後もいままでどおり継続するものとみられる。

webOS事業の終了でPalmの血脈は途絶えることに

またPSGのスピンオフと並行する形で、webOS事業終了もアナウンスされている。Palm買収を経てPalm Preといった同社のスマートフォン事業を引き継いだHPは、webOSのプリンタを含む同社製品ポートフォリオへの大規模展開webOS搭載タブレットの「TouchPad」発表と、立て続けにwebOSに関するビジョンを打ち出していた。だが結果として現時点でこれら計画は大きな成果にはつながっておらず、鳴り物入りでリリースされたTouchPadはその積極的な値下げ攻勢にもかかわらず、大手販売店の米Best Buyで販売台数の10倍以上の在庫が積み上がっている状態が報告されるなど、ライバルであるAppleのiPadに対して大苦戦を強いられている。HPによれば、まだ社内での今後の事業計画は未定の状態で、webOSを活用していく方向性も残された状態だと説明している。だが今回のwebOS事業終了宣言により、前述のPalmを含む製品ラインはすべて収束へと向かうと考えてもよさそうだ。

またHPは過去にAndroid事業の中止も決定しており、今回の決定は他のプラットフォームへの移行を意味するものというより、スマートフォンやタブレットといったコンシューマ向けデバイス事業からの撤退により近い位置付けにあると考えられる。これにより、PalmやPalmが吸収したHandspringなど、PDA時代からの血脈が途絶えることになるだろう。

今後はエンタープライズ寄りの事業へシフト

今後のHPの向かう先だが、米HPプレジデント兼CEOのLeo Apotheker氏によれば「クラウド、ソリューション、ソフトウェア」の3本柱にフォーカスした企業として、よりエンタープライズ寄りの事業形態へとシフトしていくことになりそうだ。奇しくもPSG再編を発表した同日には、データ解析技術を開発する英Autonomyの買収を発表している。Autonomyのソフトウェア事業はエンタープライズ向けのもので、HPはPC事業を切り離す一方で、よりエンタープライズへと注力していることがわかる。こうした転身は、PCやデバイス事業を次々と売却してソフトウェアとソリューションの企業になったIBMを彷彿とさせる。またPC事業でHPの対抗馬となっているDellもまた、PC/ストレージ事業での苦戦が続いており、遠からずHP同様のPC事業切り離しという判断に傾く可能性がある。以前、台湾Acer創業者の「米系PCメーカーは20年内に消滅する」という発言を紹介したが、利益率の問題から、これは遠からず本当のことになるのかもしれない。