アクサ生命保険は27日、20~50代までの生活者1万人を対象に実施した、震災後の人生観や価値観の変化に関する『震災後に「見直したもの」実態調査』の結果を発表した。調査の結果、「震災後、多くの人が将来に不安を感じる一方で、自分の足元の価値を見直す、堅実で力強い姿が浮き彫りとなった」(アクサ生命)としている。
震災後は自己防衛意識が強まり、"自分頼み"の傾向に
まず、震災後の将来への意識を聞いてみると、震災後、「この国の行く末に不安を感じた」に「そう思う」と回答した人が80.4% 、「自分や家族の将来について不安を感じた」に「そう思う」と回答した人が70.6% 、「これから先の不透明感が増した」に「そう思う」と回答した人が79.7%となり、自分や家族、国の将来に対し、不安感・不透明感が増していることが分かった。
将来への不安感・不透明感が高まる中、「自分のことは自分で守らなければという意識が増した」という人が80.1%となり、自己防衛意識が強まっている。「いわば、ひと頼みではなく、"自分頼み"の傾向が表れているといえる」(アクサ生命)。
また、働いている人に、働き方について震災前に重視していた点、震災後の今重視している点をそれぞれ聞いたところ、今重視している点として、「家族の近くで働きたい」(5.1ポイント増)や、「仕事と家族なら、家族が優先である」(2.8ポイント増)が上昇。
「高収入を得たい」(10.1ポイント減)、「働くことにより、自己実現をしたい」(5.5ポイント減)、「出世をしたい・社内で認められたい」(5.2ポイント減)などは減少した。「高収入や自己実現、他の人からの評価より、家族と一緒にいることが大事。自分にとって当たり前であった家族との時間を重視する、という意識の変化が見られる」(アクサ生命)。
また、震災によって考え方や価値観にどのような変化があったかと聞いたところ、「健康であること、健康を維持することが大切だと思うようになった」に「そう思う」と回答した人が75.9%、「家族が健康であればよいと思うようになった」に「そう思う」と回答した人が74.2%と、自分や家族の健康の大切さを改めて認識している姿が浮き彫りとなった。
「生や死の意味について考えることが増えた」に「そう思う」と回答した人が67.4%、「死が身近なものになった」に「そう思う」と回答した人が61.3%と多く、自身の死生観を見直すとともに、「人とのつながりの大切さを認識するようになった」に「そう思う」と回答した人が67.4%となるなど、「人とのつながりの大切さを改めて実感している様子もうかがえる」(アクサ生命)。
震災時に配偶者を「見直した・尊敬した」人が8割超
また、震災時の夫もしくは妻の対応を見て、「見直した・尊敬した」と答える人が85.4%と、8割以上の夫婦がお互いの価値を再認識。夫婦別で見ても、「夫を見直した」(81.7%)、「妻を見直した」(89.5%)と、どちらも高い割合となっている。
震災時の夫もしくは妻の対応を見て、「見直した・尊敬した」と答える人が85.4%と、8割以上の夫婦がお互いの価値を再認識。夫婦別で見ても、「夫を見直した」(81.7%)、「妻を見直した」(89.5%)と、どちらも高い割合となっている |
だが、震災によって「配偶者との離婚を考えた」という人も11.5%。夫との離婚を考えた妻は11.3%、妻との離婚を考えた夫が11.5%となっており、ポジティブに見直した人ばかりでもない。「あって当たり前だったものを改めて見直す傾向がこの結果からも読み取れる」(同社)。
独身者の結婚観にも変化が見られる。震災前後の結婚観を比較して見ると、「理想の人が現れるまで、結婚しない」が減少し(震災前:46.4%→震災後:40.8%)、「理想の人でなくても妥協して結婚する」(震災前:7.5%→震災後:12.1%)が増加。結婚の条件は緩和されている。
そのためか、独身女性の結婚の条件にも変化が見られた。昨年にアクサ生命が実施した働く独身女性を対象にした調査では、かつての「三高(高収入、高学歴、高身長)」が影をひそめ、「価値観が合う」「金銭感覚が一致している」「雇用形態が安定している」がトップ3にランクイン。同社では、その頭文字から結婚の"新御三K(価値観、金銭感覚、雇用形態の頭文字)"を提唱した。
しかし、今回の調査では、3位に「健康である」(58.7%)、4位に「頼りがいがある」(57.8%)が急浮上。震災後、"新御三K"の一角は、「雇用形態の“K”」から、「健康の“K”」に取って代わっている。「震災前は女性の意見を尊重し、受身でいる草食系男子がもてはやされていたが、震災を機に身体が丈夫で頼りがいのある、"リード系男子"が求められているのかもしれない」(同社)。
前述のように、今回の調査で、震災後の生活者に"自分頼み"の傾向が強いことが明らかになったが、彼らに、国民年金制度、公的医療保険制度など国の制度が将来どうなると思うか予測を聞いたところ、「現状より悪くなると思う」(国民年金制度:88.5%、医療保険制度:81.4%)という意見が圧倒的多数を占めた。
それを反映してか、人生のリスクに対して、「生活習慣に気をつける・健康的な生活を心がける」(38.5%)、「生命保険に入る」(38.0%)、「貯金を出来る限りする」(36.4%)など自力でリスクへの備えを行う人が多くなっている。「人生のリスクに対し、生活習慣や保険、貯金で備えるという生活者の実態が浮かび上がっている」(アクサ生命)。