30日にNTTドコモが発表した台湾HTCのスマートフォン「HT1100」は、「TouchFLO」と呼ばれる独特のUI(ユーザーインタフェース)が特徴的だ。発表にあわせて来日したHTCのCEO、Peter Chou氏らが会見に臨み、TouchFLOを中心に同社の携帯電話に関して説明した。

CEOのPeter Chou氏

CMOのJohn Wang氏

TouchFLOは、タッチパネルの画面を指でなぞるだけでスクロールや画面の切り替えなどの操作を可能にするUIで、HTCが2年かけて開発を行ってきたという。直感的な指の動きだけで操作できる点が特徴だ。

たとえば、待受画面で下から上に指を滑らすとメニュー画面になり、さらに、右にスライドさせると立方体が回転する効果とともに画面が遷移する。Webブラウザでは、指で画面を押さえてそのまま動かせばその方向に画面がスクロールするグラブ&スクロールも可能。画像ビューアーでは、画像上に指で右回りに円を描くとそのポイントを中心に拡大、左回りに円を描くと縮小というジェスチャーにも対応している。

こうしたTouchFLOの操作性を、同社のCMO(Chief Marketing Officer)のJohn Wang氏は、「PCのマウスに匹敵する、世界を一変するような発明」と強い自信を見せる。Wang氏は、TouchFLOが「(携帯の操作法に関して)少ない学習で使えるようになるのではなく、まったく学ぶ必要がなく使える」ことを実現したUIであるという点を強調する。

Wang氏は幼児を例に挙げ、何も知らない幼児でも本能的にものを動かせるように、ボタンを探すことなく、自分の指を使って操作できるTouchFLOを「究極」のシンプルさを実現したUIだと胸を張る。「(TouchFLOの操作に対して)何も学ぶ必要はない」(Wang氏)。

このUIの開発に際しては、「人間を重視して開発した」(Wang氏)。過去の携帯電話は、色や形は変わったかもしれないが、ボタン操作が中心で、操作をするためにはボタンを探す必要があった。これに対してTouchFLOではボタンを探す必要もなく、直感的な指の動きだけで操作できる。これをWang氏は「プッシュボタン中心のエクスペリエンスからタッチ中心のエクスペリエンス」への転換で、「新たなモバイルの時代の幕開け」と話す。

「TouchFLOは業界を完全に変えるような画期的な発明。TouchFLOに触れたら、既存の携帯電話に魅力を感じなくなるのではないか」(Wang氏)

このTouchFLOであるが、具体的な動作は30日の記事を見てもらいたい。この技術の詳細に関しては「簡単には説明できない」(Wang氏)と明らかにされなかったが、たとえばスタイラスペンと指先の違いを認識したり、つめの触れ方で男性か女性かを判別したり(つめが長いと女性と認識する)、指先で触れようとしてつめが当たった場合にそれを判別して誤操作を防いだりと、興味深い技術が詰め込まれている。そのほかにも、アドレス帳一覧で指を上下に動かすと一覧がスクロールするが、「物を滑らしたときのように、最初は速く動き、その後ゆっくりになって止まる」という動作を実現している。

また、たとえばプログラムを閉じるための「×」ボタンは、スタイラスペンで触れた時に比べ、指先で触れようとした時は内部的にはボタンを拡大するのだという。指で小さい「×」ボタンを押すのは難しいが、「指で押された」ことを認識し、タッチ可能なエリアを拡大してくれるのできちんと「×」ボタンが押せる、ということになる。

指で操作するTouchFLOの動作は、待受画面やプログラム画面だけでなく、Windows Mobileに搭載されたほかのアプリケーションでも利用できるようで、既存のプログラムはTouchFLO向けに何らかの改変を加える必要はないという。

なお、Wang氏は同じようにタッチパネルを搭載する米Appleの「iPhone」について、マルチタッチは両手を使うことが前提で、端末を落としかねないと指摘。片手で操作するTouchFLOが有利との認識を示す。一見すると似たような両社の技術だが、TouchFLOは多くの特許を取得しており、技術的にはいろいろと異なっているようだ。

HTCは、国内ではNTTドコモとソフトバンクモバイルに端末を供給、海外でも欧米・アジアで多くの携帯電話事業者に端末を提供している。昨年の出荷台数は1,000万台を超え、創業以来10年間の端末供給でノウハウを蓄積してきた。iPhoneについて問われたChou氏は、端末自体への言及は避けつつ、「iPhoneとは努力している部分が違う。(HTCは)事業者のニーズを理解している」と、携帯電話事業者と密接につながるHTCの優位性を協調した。

国内ではHTCブランドのSIMロックフリー端末も今後登場するが、HTCとしてはあくまで事業者との関係を優先していく方針で、事業者のニーズに応えていくことを優先課題とする戦略だ。